種田山頭火 | ©猫と春風の花慈しみ愛で。心。

©猫と春風の花慈しみ愛で。心。

猫たちと暮らす穏やかでささやかな日常。
当たり前だけど、当たり前じゃない、
がかけがえない特別な宝物の瞬間瞬間。
一日一日大切に丁寧に重ねています。
(旧ブログ「神様がくれた宝物2007〜」より)

南国のような台湾で
生まれ育ち
一人二千円しか持って帰れない
日本への引き揚げ者であった父は
教職につきながら
親や家族を養うために

教壇に立つ傍ら
密かに小説を描いた

当時副業は
できなかったようで
内密のこと
名前も隠して

存在も隠した

ただ引き揚げ家族を
養うために

祖父祖母自分妻弟弟の妻
まだ生まれたばかりの長兄と
八畳と台所二間の
小さな教員住宅で
身を寄せ合うほどの暮らしの中
賞金で繋いだ

それだけの為に
魂の発するように
むさぼり描いた

やがて家族は減り増え
家を持ち
まるで開拓者のように
見知らぬ雪国に根を下ろし
慎ましいささやかな暮らしで

時を流れ

自分の子供以上に
他の子供を愛し守り尽くした

晩年となり
思わぬ来訪者により

謎に包まれた作家として
初めて作家らしい
ささやかな実をつける

それでもまだ謎のまま

自分は家族の為に
やむを得ないとはいえ
副業のように小説を描いた

僅かながらも責任と
自責の念もあったろうと想う

南国育ちの雪国の教師
それだけを添えて

古い作品を世の中の
一遍として送り出し

またその存在を消した

謎に包まれた足跡を探して
ようやく其処へ辿り着いた
突然の来訪者に激しく恐縮しながら
淡々として傲らず

知る人ぞ知る名高くも
また美食家の来訪者である

後に来訪者の
美食による病などを
密かに心配したり

ただそれだけである

そんな父は教職を全うしてから
ようやく晴々と小説を描き
田舎の小さな賞に応募したり

突然の来訪者による
突然の出版も

何も関係なかった
どうでも良いほどの無関心と

ただ頼まれただけであって
自分には何も関係なかった

それより今描くことを楽しみ
それを味わい

小さな田舎雪国の
背中も指も曲がってしまった
ちょっと頑固な老人は

川柳や俳句にまでのめり込み

私に山頭火を教える

とくとくと教える

もがり笛
ああもがり笛 
もがり笛

時折美しい仏様の絵など描いては
私にくれたり

私はありがとうと少し困ったり


山頭火については
私は当時もがり笛しか知らず

今となり気になって
検索をしてみたり
本屋さんで探したりして

でも凄過ぎて

宇宙感が

直ぐ
閉じてしまいます

飲み込まれてしまうから

井上陽水さんの歌詞が
少しだけ重なる



初めて染々と読み
命の音がする涙




色んな意味で偉大で尊敬できる父でした。
私が生きてきた甘い人生より遥かに
大きな大きな人生を生き抜き
その魂を伝え

とても優しくて愛情深く少し頑固で
ロマンチックで心豊かに温かくて
熱くて厳しくてお茶目で
やんちゃで野放図に可愛くて

二階から階下へ降りる時と
トイレで用を足す時には
必ず歌を歌い

トイレのドアなど誰も
閉めたりしない

用を足しながら歌を歌う
父の大きな背中を見て育ったくらいに

トイレまで365日開放の家族
閉めるのは使わない時だけ

よく喋り何でも喋り
口笛を吹き

雪の積もる日には
雀にお米を撒き

うさぎ小屋を作り
やがて
大工さんに手伝ってもらいながら
建て増し部屋を作り

棚を作りテーブルを作り
スイカのフルーツポンチを作り

教え子が俺より遥かに立派な
家を建てたと悔しがり
笑いながら誇らしげにして


大きな背中は
いつも楽しげに意気揚々としていた

憂う暇さえない

母がようやく捕まえたネズミに
菜葉をあげる

2つの国の子供たちを
分け隔てなく愛し守り抜き

家族を大切に守った

小さな孫の手を繋ぎ
電車に乗せて往復をする



まだ若い頃はビシッとダンディで
だんだんとよれよれになるのも
また味わい深く


沢山ありがとう。

父へ


だから人に伝えたくなるような
そんな謎めいた存在すら不明の
意外と凄い作家が居ました。

その方がかっこいいと
想ってしまう
欲の無さが良いか悪いかは
知らない

ただ生前一冊も売れずに

現在これだけ名高い
太宰が存在したことは

本当に色々考えさせられる



スノーマンみたいな息子
可愛くてまた抱きしめたくなる