「あ、覚えててくれた?頑張ってるね、結衣ちゃん」
結衣にとっては新鮮だった。ここしばらく下の名前で、ましてやちゃん付けで呼ばれるなど全くと言っていいほど無い。特にここ二・三日は岡田に『本田!』と怒鳴られてばかり。しばし感動に打ち震える。
「誰が休んでいいと言った?あと四本」
岡田は容赦ない。岡田に見えないように結衣が舌を出す。向井はそんな二人のやり取りをおかしそうに眺めながら「オーバーワークになってない?お前の感覚で訓練したら、結衣ちゃんがかわいそうだよ」
文句を言いながらもロープを上る結衣を見上げながら、向井が岡田に視線をやる。岡田は結衣を厳しい目で見ながら「ついて来れなければ辞めてもらうだけだ。甘やかす気はない」
「だ・か・らっ!辞めませんって!」