これまでのお話

納屋を掃除していたら、納屋の奥の扉付きの収納部分から、父が亡くなった日に慌てて仕舞ったらしいものが出てきた。

父が病院で亡くなった時に引き取った、ロッカーなどに入っていた父の私物や、父が家に帰ってきたから急片付けてしまい込んだ居間の小物一式などが、一つの箱にまとめられていた。

これからも入院生活が続くと想定して用意していた新しいパジャマや下着、タオル類、吸い飲み、父の書き留めたメモ、カレンダー。

父のご遺体を受け入れるために急遽片付けた、居間の小物、置物や本など。

そういったものが、何も書いていないひとつの段ボールにまとめてあった。

その段ボールを見ると、父が亡くなって、家族がパニックになっていた様子がうかがえる。

父が病院で亡くなってしまって、現実を受け止める間もなく葬儀になって、亡くなった日の父の身の回りの物を仕舞ったまま、時が止まっていたんだと思った。

おそらく母は、その箱をもう一度開けることも怖かったんだと思う。

そうしてその箱については、いつしか忘れてしまったのではないかと思った。

その箱を見つけた時、父が亡くなった時の、絶望や悲しみがフラッシュバックしてきた。

あの箱は、キツかった。

片付けるのが辛かった。

でも、片付けた。

ゴミ袋に入れて、殆どを処分した。

あれから３0年以上も経っていたから。

さすがにいよいよ処分してもいいと思った。

父は威厳のある人で、家の全ての決定権を持っているような人だった。

だから、私達家族は精神的に路頭に迷ったんだと思う。

金銭面では大丈夫だったとしても。

あの箱を処分した時も、やっぱり父が、「もういいよ。」と言っているような気がした。

父も、いい加減捨てて欲しかったと思う。

箱の中身を処分した時、私は、「これから実家じまいは、今までよりもスムーズに行われるだろう。」と思った。

父が亡くなった日のダンボール箱 実家をしまう13