公開当時は声優陣が違う事で叩かれまくったが、近年は「作画が凄い」「五右ェ門がかっこいい」「ストーリーがわかりやすい」という高評価が増えてきた。
また「金曜ロードショーで放送して欲しい」という意見すら見かける。
しかし、低評価の意見が完全に無くなった訳ではなく、未だに風魔に嫌悪感を抱く意見も多い。
実を言うと、このブログを書いている私も風魔に対して、良い印象はほとんど抱いていない。
正直な所、ルパン作品で唯一嫌いな作品と言っても過言ではない程だ。
私が風魔を見て残念に感じた事や思わず突っ込んだ場面をこの記事に述べる。
①寄せ集め感が否めないキャスト
風魔で最も賛否両論となっているのはキャストだ。
そのキャストだが、
ルパン三世・・・・古川登志夫さん
次元大介・・・・銀河万丈さん
石川五ェ門・・・・塩沢兼人さん(故人)
峰不二子・・・・小山茉美さん
銭形警部・・・・加藤清三さん(故人)
と、今ではもう再集結不可能なキャスト陣なのだ。
「これはこれであり」そう感じる人がいるのも事実。
しかし、どうにも寄せ集め感が否めないのは気のせいだろうか?
山田さん達とただ声の雰囲気が似てるというだけで選んだ感じにしか思えない。
正直な所、声優陣のチームワークバランスが取れている感じも全くしない。
特に古川登志夫さんに至っては、宴会か何かの集まりで山田康雄さんの真似をしていた所、たまたま風魔の関係者の目に止まったという逸話があるらしい。
ちなみに、風魔の声優陣が変えられた理由として、最も有力なのが「当時、制作会社の東京ムービーの経営が苦しく、ギャラの高い山田さん達を降板させないと制作費が抑えられなかったから」というもの。
しかし、風魔の声優陣の中にはこの中で最もベテランかつ、山田さん達と同じぐらいの期間から活動していた加藤清三さんがいる為、「ギャラを抑えたかったから」という理由に矛盾が発生している。じゃあなんで加藤さんを銭形役に起用したし。
もし風魔が成功していたら、このキャスト陣でのルパンが描かれていったのかもしれないが、批判的な意見が大多数となったことや、風魔のOVAが発売された1988年の秋に再放送されたPART2の評判が高かった為、結局このキャスト陣は後にも先にもこの1回だけとなった。
というか、このキャストで続けたら「ルパン三世」が終わっていた可能性すらある・・・
なお、古川登志夫さんは風魔以降の作品だと2022年の配信アニメ「LUPIN ZERO」のルパン二世役として抜擢されるまでの35年間、1度もルパン作品に出演させてもらえなかった。
②「カリオストロの城」に寄せすぎな上に、短すぎるストーリー
「風魔一族の陰謀」のストーリーは、WikipediaやDVDパッケージ裏に終盤までの展開がほぼ書かれてしまっており、人にもよるだろうが、あまり興味をそそられる様な内容ではない。
また、全てが同じという訳ではないにしても、ところどころ「カリオストロの城」に寄せすぎなのだ。
特にクライマックスシーンとラストシーンはキャラクターや風景等を差し替えただけで、ほとんどカリ城と変わらない為、さほど盛り上がらない。
ちなみに、風魔の上映時間は73分。
元はOVA販売の為なので仕方ないとは思うのだが、映画としては短すぎる。
金曜ロードショーで放送するにも、短くて無理がある。
長さと内容からよく映画と間違えられやすいTVSPよりも短い。
③キャラ崩壊としか思えないレギュラーキャラの設定
ルパンはチャラチャラしてて軽く、迂闊な面があったりと、凄腕の泥棒という感じが全然しない。主人公(笑)
次元が鈍臭くて間抜けで頼りないオッサンになっており、「ルパンの相棒」ではなく「ルパンの助手」感が半端ない。
五ェ門が主役級なのは評価できるが、何故か石川家を捨てて小娘の家に婿入りしようとするロリコン侍になった上に、幻覚ガスを吸って自分を見失う程錯乱していたりと弱体化しているのが否めない。
不二子がいつも以上にお金に執着し、魔性の女とは程遠い注意力散漫かつ、おバカでがめついおばさんになっていた。
銭形が出家して住職になっていたり、いちいち叫んでてうるさかったり、ルパンを取り逃した際に「お前の運転のせいだぞ!!」と風見の胸ぐらを掴んで八つ当たりしたり、部下からの電話シーンでルパンが見つからないと電話報告を受けた時にはその部下に「見つけるまで帰ってくるな!!」と怒鳴ったりと、普段の銭形からは考えられない鬼上司感が半端ないシーンがあったりと、レギュラーキャラ達のキャラ崩壊が激しすぎる。
また、ルパン一味の連携シーンが少なく、チームワークの良さが分かるシーンはほとんどなかった。
「カリオストロの城」とは違い、ルパンと銭形の共闘シーンが描かれた訳でもない為、熱い展開もほとんどなかった。
④イマイチなゲストキャラ達
五ェ門のカップリング相手として描かれている事がある墨縄紫は本作のゲストヒロインである。
明るい性格で、五ェ門に一途な想いを抱く少女という少女漫画のヒロイン感満載のキャラであり、pixivにも記事やタグがあったりと人気もそれなり。
しかし、ハッキリ言って私は墨縄紫が大嫌いだ。
ただ単に私が五ェ門を推しキャラとしていて、結婚という形で五ェ門を独り占めし、五ェ門に泥棒を引退させようとしているのが許せないという理由もあるが、作中で問題行動があったからでもある。
五ェ門がまだ話しているのに「あたしが邪魔?」とメンヘラ発言して五ェ門の話を強制的に遮ったり、これから危険な場所に向かうというのに、感謝していると言う五ェ門に対して「じゃあ、感謝の印ちょーだい♪」と呑気にキスをねだったり、段差から降りた勢いで五ェ門の首に手を回して抱きついてイチャついたりと、緊張感無さすぎなウザキャラだった。
恋人が錯乱していたり、命が危険な状態になったら、自分はどうなってもいいから助けたいという気持ちは分からなくもない。
だが、あまりにも迂闊すぎる。
恋は盲目とはよく言ったものである。
再登場した暁には、ルパン一味及び「ルパン三世」シリーズが終わる可能性大なので、紫はもう二度と登場しないで欲しい。
紫の祖父・墨縄老人は、壺や財宝を守る為とはいえ、孫である紫をあっさりと生贄にしたり、孫娘の婿になる予定の五ェ門に紫の生還を諦める様に言う等、かなりの薄情者。
苦悩するシーンがないので、あまりにもあっさりと紫を生贄にしている様にしか見えなくてとにかく最低である。
紫の生還を諦めるのではなく、「紫を頼みます、五右ェ門殿」みたいな紫を大切にしている事や五ェ門を信頼している事が伺えるような台詞があれば印象は悪くなかったと思う。
人(孫娘)の命より、財宝を優先した罰だと思った。
最終的には、紫を大切に思っている場面がちゃんと描かれていたが、正直遅すぎる。
本作の黒幕である風魔のボスは、五ェ門との戦闘シーンぐらいしか見せ場がない。
また、紫を人質に取った辺りで詰めの甘い部分もあった。
その場面で紫を痛めつけて五ェ門の動揺を誘うなりすれば、五ェ門に勝てる可能性はあったのに。
ボスの側近で、実質組織のNo.2である風見は「カリオストロの城」に出てくるジョドーのような存在だが、ジョドーとカリオストロ伯爵の出番が同じくらいなのに対し、風見の出番はボスよりも多い。
しかし、その容姿がジョドー以上に小物感が半端ない。
戦闘シーンがない事や、紫を人質に取って慢心する所、その紫に体当たりされただけでバランスを崩して転落し、断末魔をあげながら退場したのも小物感に拍車をかけている。
ガクシャはぶっちゃけ登場させる意味が分からなかった。
見た目はムスカっぽいのに、ビビる場面があったり、ルパンが持ち込んだ幻覚ガスで部下達と仲間割れしてそのままフェードアウトした為、めちゃくちゃ雑魚キャラだった。
担当されていたのは「ドラゴンボールZ」の人造人間17号で知られる中原茂さんなのだが、完全に中原さんの無駄遣いだった。
隊長及び風魔の忍者兵は、格好が全く忍者に見えない。ルパン達を1度も苦戦させられなかったり、罠にかかった忍者兵が結構な数で死んでいたりと完全に雑魚キャラ扱い。
また、死体がやや生々しく描かれていてグロい。
全体的に見た風魔一味の総合的な強さについてまとめると、ボスは強いのだが、ラストシーンでの詰めの甘さが目立ったり、風見に戦闘シーンがなかったり、明らかに戦闘能力皆無なガクシャがいたり、風魔忍者達がルパン達を1度も苦戦させられなかったことから、ルパンシリーズの敵組織としては弱い方。
⑤音楽がダサく、盛り上がりに欠ける
音楽担当が大野雄二さんではないからか、全ての音楽が生演奏ではなく、ゲームで流れてくるような安っぽい打ち込みサウンドのような音楽となっている。
録音監督として、「シティーハンター」の音響監督である浦上靖夫さんが関わっているからか、シティーハンターのBGM感も否めない。
極めつけは、「ルパン三世のテーマ」や「銭形マーチ」が全く流れないのだ。
当然、評価も良くなく、「ルパン三世のテーマ」が流れてこないことに不満を感じた人も多い。
印象に残った音楽は特になかった。
⑥SEが完全に別アニメ
ルパンがワルサーP-38を撃った時の音が「シティーハンター」で冴羽獠がコルト・パイソン357で撃った時の音だったり、倒れる音が「ドラゴンボール」や「ONE PIECE」の音だったりと、本作のSEは別アニメのSE寄せ集めという手抜き感が半端なく、ルパン作品で使われているSEは1つも使われなかった。
⑦主題歌「セラヴィと言わないで」のミスマッチ感とその扱い
OPで使用された主題歌の「セラヴィと言わないで」だが、この曲が流れている間、映像風景がまさかの古臭い田舎。それに加えて、坊主になった銭形がいるお寺の様子も映されている。
キャビアだのリムジンだのバブリー臭漂う歌詞が出てくる為、風景に全く合っておらず、完全に意味不明。
ちなみにタイトルのセラヴィとはフランス語。「人生ってこんなものさ」という意味。日本が舞台なのに、フランス語のタイトルって・・・
ちなみに、ルパンの主題歌は基本的に大野雄二さんが作曲しているのだが、この曲は大野雄二さん作曲ではない。
そのせいか、ルパンではお馴染みの生演奏ではなく、デジタルサウンドである。
ルパンにデジタルサウンドはあんまり合わないし、違和感半端ない。
また、「カリオストロの城」の「炎のたからもの」や「バビロンの黄金伝説」の「MANHATTAN JOKE」とは違い、EDでは流れなかった。
代わりに、「Funky Meditation」という音楽が流れてくるのだが、曲の感じが軽すぎて、ラストシーンの雰囲気に全然合っていない。
⑧どこかで見たような感じかつ、まとまりのないキャラクターデザインと絵のタッチ
キャラクターデザイン及び作画総監督を担当したのは、友永和秀さん。
五ェ門や不二子がPART1に近いキャラクターデザインで、ルパンのジャケットもPART1と同じ緑色なのは評価できる。
しかし、これまた「カリオストロの城」に寄りすぎなのは否めない。
それどころか、「カリオストロの城」のキャラデザや作画に色々な作品のデザインが入ったかのような感じで、まとまりがない気がする。
全体的な色のタッチは田舎が舞台という事もあり、「じゃりン子チエ」や「平成狸合戦ぽんぽこ」みたいでどこか芋臭い。
特に、本作の銭形は「じゃりン子チエ」に出てくる竹本テツみたい。
キャラ達の目がパンダコパンダっぽく、紫に至ってはパンダコパンダとキャッツアイを足して2で割った様な目で可愛くない。
全然ルパンらしくないデザインだし、容姿や服装も含めて全く好みじゃない。
特に冬場の回想シーンの服装がマフラーも含めてすごくダサい。セーターにデカデカと「M」はセンスなさすぎ。
大塚康生さんが描いたと思われる紫は割と可愛らしかったが・・・(それでも、別アニメ臭が否めないが)
どうやら友永さんは美人を描くのが苦手らしく、紫を美人に描こうとしても、どんどん狂ってきて上手くいかなかったとのこと。
また、紫の容姿は最低限守られているのだが、蝶の髪飾りの大きさや形、前髪、跳ねてる髪が所々違っていてバラつきがある。
名有りのキャラ達とモブキャラ達との顔面偏差値がありすぎるのも問題。
いかにも「名無しのキャラです」感満載の顔なのである。
⑨戦闘シーンの少なさ
テレコム・アニメーションが制作に関係しているので、アクションシーンがよく動く。
見ていて本当に凄いとは思っているのだが、残念なのは戦闘シーンが少ない事。
風魔という作品の大部分のアクションシーンがカーチェイスシーンである為か、戦闘シーンは終盤にならないと出てこない。
作画が良いだけに、少々もったいないと思う。
⑩ハードボイルド色皆無
ルパンと次元の喫煙シーンはなく、銃撃シーンも、機関車整備庫でルパンが撃った1シーンのみ。
次元に至っては、作中1度もマグナムを撃たなかった。
台詞回しも正直カッコイイとは言えず、「ルパン三世」らしくない。
正直な所、何故レビュー等で高めな評価が付いているのか分からない。
五ェ門の扱いが全体的に良いから神作?
作画がよく動くからこそ、アクションシーンが凄いから神作?
よく分かる。分かるけど・・・
ぶっちゃけ、「風魔一族の陰謀」ってそれら以外良いところないよね?
雑な所や二番煎じ的な部分が多いのに、過大評価されすぎなのでは?と思ってしまう。
風魔が全てではない。私は風魔が最高傑作だとは思わない。
むしろ、もっと評価されるべきルパン作品はたくさんある。
「一介のファンが評論家を気取って何を偉そうに・・・」
「風魔も愛してこその真のルパンファンだろうが!」
「風魔の良さが分からない悲しいヤツ(笑)」
「風魔が好きな人もいるのに、なんでそんな酷いこと言えるの?」
と言われても仕方のない批判的な意見ばかりを書いたが、この意見は「心からルパン三世を愛しているからこその意見」として変えるつもりはない。
もちろん、風魔が好きな人達には申し訳ないと思っている。
それでも、自分の意見は曲げない。曲げるつもりもない。
分かってくれる人が少しでもいてくれたら、それでも構わない。