訳も無くじっとしていられなり
行く当てもなくひとり車を走らせる。

ぼんやりした頭が、残ったものはこの車だけだなと気付く。


無性にコーヒーが飲みたくなる。

誰もいない真っ暗な公園の駐車場に停め
自販機の缶コーヒーを買う。

無機質なぬくもりが、つめたい掌を刺激する。

シートに身を沈めて、やたら明るい月を見上げる。



昼間の出来事を思い出す。


不動産屋のパーティションで区切られたスペース。

「大切に使わせて頂きますからね」

買主から笑顔で声をかけられた。
契約書に印を押した。これで全て終わった。


右隣に座っていたあいつとマクドナルドで最後の精算をした。

「これで本当に幸せになれるね」

別れ際、精一杯の作り笑いで皮肉を吐いたみた。
あいつは何も言わず、心からの微笑みで返した。




CDに飽きたので、ラジオに変える。

「この冬一番のクリスマスソングになりそうですね」

女性パーソナリティがコメントした後、曲が流れる。


曲を聴きながら、勝手に溢れる涙を素手で拭う。
泣いている自分に少し驚く。


しばらくして落ち着く。


明日も仕事だから帰ろう。
誰もいない、あの部屋に。


「メリクリ」という曲が
心に残るクリスマスソングになる。


「あいつの誕生日、クリスマスだったな」

静けさに嫌気を感じ、小さく声を出してみる。

コーヒーの空き缶を捨て、駐車場を出る。