　今回の恵那散策は岩村城下町の遥か手前までしか至れなかった。しかし岩村名物カステラは、今回も恵那駅脇の土産センターで、しっかりゲット。三年前の恵那峡散策の時もカステラだけは購入したし、岩村城下町の散策に拘らず、恵那に来ると必ず岩村カステラは購入している。江戸時代にオランダ人から本場の作り方を教えてもらって以降、変わることなく同じ製法で作っているという岩村カステラ。伝統に拘る云々に騙されているわけではない……と思う。実際これが美味いのだ。例えばカステラで日本を代表するのが長崎堂のカステラ。世の中に出回っているカステラは基本あれを意識しているかと思う。しっとり甘い口当たりのそれだ。岩村カステラは日本の主流となったその手のカステラとは印象をかなり異にする。食感も重厚で、味わいも良い意味で朴訥とした控えめな甘さ。元々はこちらが当時の本場の味わいだったみたい。で、好みは分かれるだろうが、僕としては甘さが先立ち食感に物足りなさを覚える長崎堂のカステラより、昔ながらの岩村のカステラを推す。どっしり重量のある食感を噛み締めていると、そこにじんわり甘さが広がってゆく。食べ応えが岩村カステラの方が堪能できる気がするのだ。
　最も春の良き日を象徴する味として、或いは贔屓目に味わっている可能性もある。それを100%否定し切ることは出来ない。それはそれとして幸福の幻想込みで噛み締めればよい。
　僕にとって恵那は栗きんとんではなくカステラ。そして朴訥としたその味わいは、春の恵那の幸福を味わいで甦らせてくれる。
　もう一つ今回は恵那産のハムも買ったが、こちらも味わいが重厚。そうか。春の恵那の幸せはどっしり重量を感じさせるものなのか。そうか。

春の幸福は重量どっしり感じさせる。