第29章 夢 The Dream
ハリーは占い学の授業中についつい居眠りしてしまいました。夢はあまりに生々しく、ヴォルデモートの隠れ家の出来事を描き出します。ワームテールは誰かを取り逃がしましたが、その人物が死んだこと。その結果、大蛇ナギニの餌食ではなく、ワームテールの罰は拷問で済んだことです。「磔の呪文」の拷問でワームテールが苦しむだけでなく、ハリー自身も額の傷が痛み、のた打ち回って苦しみました。ハリーは医務室ではなく、ダンブルドアの部屋へ直行しました。ダンブルドアの推測が正しければ、ハリーの夢は単なる夢ではなく、現実に起こったことのようです。かけ損ねた呪いを通じてハリーとヴォルデモートはつながり、ヴォルデモートが近くにいるときと、彼が強烈な憎しみに駆られるとき、ハリーの傷は激しく痛むようです。
第30章 ペンシーブ The Pensieve
ダンブルドアの部屋で一人待たされている間に、ハリーは戸棚にある不思議な水盆を覗き込みました。それは浅い石の水盆で、縁にはルーン文字と見たこともない記号が彫られてあり、中には銀色の物質が入っています。これは「憂いの篩」(ペンシーブ)と呼ばれるもので、自分ではどうしようもない心の溢れる思いを物質に変えてペンシーブの中に入れ、後で整理して客観的に自分を見直そうとするアイテムなのです。
ハリーはそれと知らずにダンブルドアのかつての憂いを覗くこととなりました。それは三つの裁判の場面でした。検察官としてクラウチ氏が裁判を進行し、陪審員たちの評決を得るものです。一つ目はカルカロフのもので、彼は自らの命乞いのためにデス・イーターの名を次々に白状していきます。次はルドビッチ・バグマンのもので、彼はすぐに無罪と断じられます。最後はクラウチ自身の息子の裁判で、クラウチは息子が泣き叫ぶにもかかわらず、冷徹にアズカバンへの有罪判決を断じます。ハリーはダンブルドアに現実の世界へと引き戻され、ペンシーブが何かの説明を受けます。そして、ダンブルドアはペンシーブに自らの憂いをさらに加えるのでした。
現実のこの世界には憂いが絶えないとローリングが考えていることがここに窺えます。