「私、そんな立派なもんじゃありません。ただ、自分が触れ合った人には、等しく幸せになってもらいたい、そういう性なんです」
「そう、ウーちゃんは、触媒なんだよ。黙っていても人に影響を与えて、時として生き様さえも変えてしまうんだ」
「なるほど、触媒ですか。そんな大それたものではないかもしれませんけど、理不尽なことを言う人には正面から切りかかっていくような所があるし、哀想な人や動物を見るとどうしても見過ごすことができないんです。お陰様で人生の垢もきれいに洗い流すことができました。これからの生き方を、じっくり考えてシンデレラになろうと思います。自由を拘束された子供たちや、生きながら死んでいるような勤め人や、水もない廃屋に住んでいる老人。可愛そうな光景を沢山見てきましたから。御方様、お手伝いしていただけますか」
「もちろんだよ。まだまだ元気だからね。こき使ってもらってかまわないよ。良い、死に場所ができたよ」
「なにをおっしゃいますか。私のこれからの大仕事はなんだと思いますか。御方様と吾朗を百まで長生きさせること、息子があるべき世界に身を置けるように、念じて協力することなんです」
「ありがとう。子供を捨てた女が、こんな有難いことを言ってもらってバチが当たりそうだよ。恥ずかしいけど、ひとつ宣言しておこうと思うんだよ」
「まあ、なんでしょう」
「息子への詫び状をね、書いてみようと思うんだ」
「そうですか。どうしてまた、そういう心境になられたんですか」
「ただ純粋に詫びておきたいんだよ。ウーちゃんの、渾身の子育てを聞かされて、自分が情けなくてね。こういう愛情の形もあるんだということを残しておかなければいけないような気持に駆り立てられたんだよ。とにかくこのご時世、いい加減な親が多すぎるだろう。誰かが苦言を呈さなくちゃね。昔から、書くことは大好きだし」