「私って、我慢はほとんど言わない人間だと思うんだけど、申し訳ないけど、ここだけはもうイヤだわ。ここは成功から見放された土地だもの。きっと、厄病神が住んでいるんだわ」
「同感だよ。ここにいるとロクでもない事を思い出して気がおかしくなる。行くところは、サンの小屋しかないな。同じ貧乏するなら、自然の中がいいよ。ショー君もあそこが好きだからね」
「お箸の件でお母さんから借りたお金を全部失くしてしまった時、私こそ厄病神じゃないかって自分を呪ったわ。母に申し訳なくて、私が生きている事そのものが罪悪じゃないかとさえ思った。今でもどっかでそう思ってる…ここにいると、ずっと自分を否定し続けていることになって、本当に神経を犯されてしまいそうだわ」
「僕たちは、どこかで第二のオコリンボを求めていたんだよ。強烈なリーダーシップを発揮してくれる人がいないかと焦る気持ちが落とし穴だったんだ。自ら進んで火の中に飛び込んでしまったのかもしれない」
「サンの小屋に移れば、いやな記憶も薄れていくでしょう。ここは縁の無い土地だったわね」
「ああ。箸の一件は店をつぶした時よりもはるかにダメージが大きかった。立ち直るにはまだまだ時間がかかると思うよ、でも生き続けるしかない」
「やることなすこと全部が裏目に出てしまったけど、ショー君が生まれて二人が三人になった。良いこともあったのよ。今に、ここのことも懐かしく思い出す日が来るかもしれないわよ」