“3たて”が美味しいコーヒーの秘訣。や○○メソッドを使って抽出すると、誰でも簡単に美味しいコーヒーに仕上げられる。これらの情報は、多くの人がそれぞれの過去と比較をして導き出されている。それは事実を積み重ねに依存した、最大公約数的に納得させられる手法を採っている。しかし、それらは幾ら突き進めていっても真実にはならない。
それにはまず、コーヒーの味に関して、認識しなければならないことがある。それはコーヒーが嗜好品と呼ばれ全ての人が賛同する最も美味しいと感じるコーヒーは存在できない事が最大の根拠となる。また比較対象を何処へ定めているかも大きな問題となる。更に簡略化を進めてしまった結果は、以前に採っていた手法の、良いところが不明になってしまうことだ。そこには淘汰圧が掛かり、その時に使われていた器具も姿を消されてしまっている。
そして特に日本では、多くの食料品で“新鮮”がより美味しいイメージが定着してしまっている。そうしたイメージを、コーヒーにそのまま移行して思考させている。しかしエイジングした方がより豊かなテイストに感じる食品も数多くある。
それでは“3たて”の一つ一つを見て行こう。
煎りたて・・・焙煎中排気量を上げて、豆に沢山の酸素を吸収させてしまえば、既に焙煎機の中で酸化劣化を引き起こさせてしまっている。そうしたディレクションを揮っていれば、確かに“煎りたて”にしか美味しさを感じられない。またドリップしている時に、内包ガスが熱膨張をして粘性の高い成分を纏って泡を作り、新鮮さをアピールさせた映りにビジュアルの美味しさを強調させる。ところが焙煎中排気を抑え、酸素に触れさせないようにしたり、豆の中にある酸素を奪ったり出来れば、煎りたてよりエイジングさせた方がシェルフライフ(品質保持期間)は極端に伸び、テイストも安定する。中には焙煎後1ヶ月経過させた方がより風味が増す場合もある。だから“煎りたて”が上位にくるのは、焙煎中に長い時間酸素に触れさせた焙煎豆だけである。
ところが排気を抑えた焙煎は、燻り臭や焦げ臭/味になると思わされている。しかしそれは攪拌が行き届いていない所為であり、焙煎機のキャパシティに対して投入量が多すぎたり、焙煎機の性能が低かったりしている為だ。特に焙煎機のドラムは回転運動させるため、超小型の焙煎機ではドラムの径が小さすぎて、遠心力をいなした攪拌ができない。
挽きたて・・・何も考えずに簡単に美味しくできている感を持たせられている。これは保存方法も同等の考え方をしてしまっている。それは、自身の手間を掛けずに美味しくできる方法と思わされ、飛びついてしまっている。しかし実のところミルの性能がテイストへ与える影響は非常に大きい。
性能の優位性は、より小さな力で粉砕出来る方がよい。豆に大きな力を必要として粉砕するミルは、基本の粉粒粒度の形状が球形に近くなる。その基本の粉粒を一粒に戻したときに穴だらけになる。そして穴の部分にくる粉粒は全て微粒粉となる。この微粒粉が多いと、ドリップでは粉層を流れる方向が変えられたり、目詰まりを起こさせたりして抽出時間をコントロールできなくさせられる。そうした事態は、ミルのブレード口径が小さかったり、刃先が鈍かったりしているため、非効率でブレード内を移動して同じプロセスに留まって粉粒の角を削って行く。特にミンサーと呼ばれるブレードがプロペラ式の物は、ブレードと豆が同じ方向へ移動するので非常に非効率粉砕させる。特に浅煎りでは、豆の表面にある組織を破壊して、好ましく感じない成分の溶解を進めてしまう。
性能が出ているミルは、豆にハサミが当たった瞬間破砕がおき、順次プロセスを進めてゆく。そうして粉粒になった形状は、しっかり角があり微粉は少ない。
“淹れたて”・・・蒸気圧が高いお湯を使ってドリップすると、前述したように泡を作って粉層を膨らませる。この泡は“灰汁”と言われているが、実は初期に作られる泡は内部組織にある高粘性の主要なテイスト成分である。それを泡にしてしまうと、お湯への拡散効率を低下させる。前述してある通り、本来角を保ったまま挽かれた粉粒の豆表面組織成分は、粉砕された面からしか持ちだされにくい状態である。しかし蒸気圧が高いお湯を使い時間経過のタイミング3分を越すと、そこの成分を沢山持ちだす。そしてその成分は酸化させると、劣化味を強くする。またドリッパーの表面は開放されているので、水蒸気と一緒に蒸発しやすい成分も空気中に拡散されてしまう。ところが蒸気圧があまり高くない60℃以下のお湯を使うと、豆の表面組織にある成分は長い時間を掛けないと持ちだされない。そして粉粒表面から蒸発する成分も少なく、より風味が豊かに感じられる。
こうした事は、正解に一律化を図りたい生産者から発せられ、それを消費者が鵜呑みにして拡散して行くことでパラダイムとなってゆく。だから一律の手法を採っていれば、事実として浮かんでいる。しかしそれは等号記号で示される真実とはほど遠い。