朝、har.とちゅうたろは散歩をする。
保育ママIさんの所へ行くには、大人の足なら5分。その道のりを、だいたい15分~20分くらいかけてちゅうたろと歩く。
幸い、har.達の住む地域は山の中にある為、自然がいっぱい。
山林の道を歩けば、風が吹くたび木々がざわめいて、葉っぱが踊る。木洩れ日が揺れるのを見て上を見上げたちゅうたろが、歓声を上げ、空を指差す。
小道を抜ければ、今度は畑。
小さなそこではナスやトマトが成っていて、最近ではあまり見掛けなくなった無人販売所があり、それらを購入できる。
畑の隅には池もあって、どろんとした藻水の中、オレンジ色の鯉がしなやかに静かに、動いている。
とにかく、どこを歩いていても、植物や昆虫には事欠かない。
ちゅうたろはその全てを理解したい、そんなまなざしで足を止め、ひとつひとつ、見つめる。指をさし、振り向いてhar.に目で問い掛ける。
「コエッ?」
そのたびhar.は
「アリさん。」、
「お花。キレイだね。」とか
「セミさん。死んでるね。」
とか、色々言うんだけど、ちゅうたろは最後、去り際に決まって、それら全てに手を振る。
「じゃあね。」
なのか、
「いってきます。」
なのか。
全部ひっくるめ「バイバイ」なのか…、わからないけれど、そうする。
(もちろんすれ違う人に対しても。)
そして今朝、初めて、ちゅうたろはhar.にも手を振った。
先月から通い始めて、最初は毎朝ギャン泣き。
ちゅうたろがIさんと後ろを向いたスキに逃げるように走り去ったり、har.から離れようとしないのを無理矢理連れて行ってもらい、Iさん宅から聞こえて来る泣き声が止むまで外で聞いていたり。
本当に辛そうで心が痛んだけど、最近は少しずつ慣れて、泣かなくなったちゅうたろ。
har.の方は見てくれないけど、Iさんに手を引かれ、むっつりと黙って家の中に入っていく彼を見て、
「ちゅうたろは偉いな。」
といつも感じていた。
そして今日。
いつものようにIさん宅に着き、家の前でIさんと少しの雑談。(熱が少し高いとか、食欲がないとか、その日の様子やなんかを。)
それから玄関まで一緒に行くと、今日は自分から、Iさんが開けたドアの中に入って行った。そこからおもむろにhar.を振り向く。
har.の顔をしっかり見て
フリフリ~…
!!!
Iさんとhar.は顔を見合わせ、互いにビックリ。
でも刺激しないよう、小さく拍手。
har.はもちろん、嬉しい笑顔で手を振り返す。
影の中の木洩れ日みたいに、ちらちらと動くちいさな手が次第に見えなくなり、、そしてそっとドアは閉じた。
しばらく待ったけど、もちろん泣き声は聞こえなかった。
一ヵ月と一週間。
君ががんばった証を今日、私は見たよ!
毎日「こんにちは」と「さようなら」を繰り返す、限りある生命たち。life!
そのひとつでも多く、君と一緒に見たいもんだね。
閉じられたドアは、また開くんだから。





