誰しも虫歯を治した経験はあると思います。


私は虫歯を麻酔なしで神経を抜く経験をしました。


今でもはっきりと


        神経を抜く痛さとその情景


を覚えています。


あれは中一の夏休みの終わり

親父に連れられて、徳之島よりひとつ本土よりの奄美大島に虫歯の治療に行きました。



名瀬という群島一の街で歯医者に診察を受けて「この虫歯は既に神経まで達していて、神経をとらなければならない。」と告げられました。


その頃の神経を取る方法は、虫歯に薬を詰めて神経を殺してから抜くやり方です。


神経を殺すには一日がかりです。


薬を詰めた後は、神経が死ぬまで痛くて痛くて、正に痛みとの戦いでした。

その痛みはずっーと続いているのですが、その痛さと戦う体力も必要でしたので、その疲れからかいつの間にか眠るほどでした。


翌日になって虫歯から神経を抜きます。

神経は既に死んでいますから神経を取る時は痛くありません。


しかしその後の治療をするうちに痛みがあったのでそれを先生に言うと「どれどれ」と言いながら針金のような細い棒で引っ掻きまわします。

それに対して「痛い」と叫ぶと「これは神経が死にきれず残っている。」というのです。


そうです。歯の根っこの神経が生きていたのです。


先生が「残りの神経も取るから我慢してね。」と言うと、麻酔もせずにいきなりさっきの細い棒を虫歯に入れてグリグリと回し、その棒に神経が絡まるや、先生は一気に引き抜きました。


麻酔もなく正に生き地獄でした。


私はあまりの痛さに泣き叫び、先生が神経を引っ張る時には身体もそれにつられて浮き上がるほどで、そのまま失神してしまい、気がついた時には休憩室のソファーに寝かされていました。


先生から見せられた神経は、2ミリほどの肉片でした。



学校は既に2学期入っていて、親父は島に帰る時に飛行機に乗せてくれました。

私にとっては初めての経験でした。


今では飛んでいない東亜国内航空のYS-11に乗せてくれたのです。



親父もオフクロも亡くなりましたが、あの時の


      麻酔なしで神経を抜いた時の痛さ


と、YS-11に乗って空から眺める


      奄美大島から徳之島に至る島並み


は忘れることができない情景になりました。



最近は半年置きに五っちゃんを連れて歯の定期検診に行くのですが、今でも歯を削る音や「歯石を取ります。」と聞くと


      麻酔なしで神経を取った時のこと


を思い出すのです。