大阪で会議のあと、電車待ちの間にミオで晩ごはん。
ところが詰めていた歯がとれ噛み締めると痛い。
折角のご馳走を目の前にして食べれないのは辛いので応急処置。
左の上の歯が痛いので足の陽明胃経の変動。
宮脇奇経治療では足の陽明脉。
患側の陥谷-合合にテスターを貼って効果判定。
噛み締めても痛くないので主穴である陥谷に金粒、従穴である合谷に銀粒を貼付(いつなんどき誰でも治療できるように常に治療道具一式携帯しています)。
お陰さまで天王寺の夜景を見ながら完食できました。
東洋医学から診た歯痛の病因病理

実はこれ瘀血です。

■大原則
気が動けば水が動き水が動けば血が動きます。
気が滞ると水が滞り水が滞ると血が滞ります。

■気滞・湿痰・瘀血・邪熱
気が滞ると気滞を生じ、水が滞ると湿痰を生じ、その結果血が滞ると瘀血が生じ、最終的に邪熱を生じます。
この邪熱が上逆して歯に集中すると歯痛を発症します。

■気滞→瘀血→火化→邪熱
さらに分析するとこうなります。
気が滞ると瘀血という病理産物を生じます。
気が巡らないので最初は冷えますが長らく停滞すると発熱します。
火化です。
なぜででしょう?
気の停滞は緊張、軋轢、摩擦です。
手を力一杯握りしめると熱くなります。
見た目にも手が赤くなります。
緊張、軋轢、摩擦によって内圧が高まり温度が上昇します。
火化です。
こういう状態が体のどこかで起こっています。
そうして火化しますが、病的に生じた熱ですのでこれを邪熱とします。
古代の中国人は体を蝕む要因を邪としました。
秀逸だと思います。
火熱は陽邪ですから虚熱実熱の違いはあれ上昇拡散します。
そうして手足の陽明経に飛び火すると歯が痛みます。

■気滞の病因病理 
歯痛は気滞から始まるわけですが、気が滞る最大の原因は七情の乱れです。
今風に言えばストレスです。

ストレスを受ける→気が滞る(気滞)→長らく停滞すると→緊張・軋轢・摩擦し内圧が亢進→火化し→邪熱が発生→上昇拡散→体のあちこちで更なる気滞・湿痰・瘀血・邪熱を生じ→疼痛。

それが歯に集中したのが歯痛です。
正に通じなければ病むです。
■ストレスは最強の外邪
社会生活を余儀なくされるわけですから、直接的であっても間接的であっても対人関係によるストレスがほとんどです。
なのでストレスは最強の外邪です。
歯痛の鍼灸治療
◎本質治療
ストレスに対応する五臓は肝臓ですが、失調する原因でもあります。
肝気が滞ると肝火を生じます。
■肝火が肝陰肝血を焼き払うと肝虚証になります。
■肝陰肝血は腎陰腎精にフォローアップしてもらっいる肝腎同源の間柄にありますから肝火が腎陰腎精を焼き払うと腎虚証になります。
■肝火が同じ中焦にある脾に横逆すると脾虚肝実証になります。 
■肝火が上逆して肺を衝くと肺虚肝実証や肝虚肺実証になります。
■天一水を生じ地二火を生じます。
水は陰性ですから下降します。
火は陽性ですから上昇します。
火は上焦に玉座し心臓という働きを発揮します。
火だけだと燃え盛って火事になるので心臓には元々陰気が備わっています。
これを心陰心血とします。
肝火が上逆して心陰心血を焼き払うと心虚証や腎虚心実証になります。

証とは病因病理と治療法ですから証に従って虚実を弁えて補瀉調整し病因病理を解決することを治療の第一とします。

◎対症療法
五臓の変動によって生じた邪熱が手足の陽明経に飛び火すると歯痛が起こります。

■宮脇奇経治療
□上歯痛 陥谷-合谷
□下歯痛 合谷-陥谷
□歯茎はこの逆
□上前歯 督脉
□下前歯 任脉
□任督は男女で逆との説がありますが追試してください。

■刺絡鍼法
□上歯痛 レイダ
□下歯痛 商陽
□歯茎はこの逆
□患部の周辺の血絡から採る(※絶対に患部に直接はしないこと)

■子午治療
□沢田眞伝流では上歯痛には胃-心包で厥陰兪。
厥陰兪は肝と同じ厥陰経で瘀血を動かします。このような同じ働きをもつ経同士を共軛関係とします。

■経絡頚腕調整療法
□顎下のキョロッとした硬さの硬結を見つけこれを実所見とし、その硬い中に軟らかい虚の所見があり、あるいは上下左右にありその実の中の虚の所見にてい鍼をソーッと当てて補い取る。

■標治法
患部に瀉的に刺鍼。

◎養生法
気滞の原因であるストレスを溜めないこと。
夢分翁は三清浄(三つの清まし)にて欲心(むさぼり)・圭怒(いかる)・愚痴(おろか)の三毒を慎むことの大事を説かれています。
思うところ多々あります。
怒るだけ損やなぁと(^_^;)
ストレスからの気滞・湿痰・瘀血・邪熱は歯痛にとどまらずあらゆる病気の温床になります。
何故虫歯が広がるか?
それは火は風を生むからです。
邪熱から風邪が発生します。
風の遊走性に載って広がっていくのです。
アトピー性皮膚炎のかゆみも同じです。
もっと言えばがんの転移もそうです。
取り敢えず怒りと執着を捨てることをお勧めします。