7,またいつか
どれくらい時間がたったのでしょうか。
女王様が、スーッと両手を上げました。
その瞬間、皆ピタっと歌や踊りをやめました。
「めぐみの時間だよ」
「めぐみの時間だね」
「行かなきゃいけないね」
「行かなきゃならないよ」
2人は女の子の手を取ると、丘の上に導きました。
「え?」
「しばしお別れだよ」
「また会う日までね」
空全体が白く光だし、女王様のお腹の黒い塊の、白いヒゲのようなものが、どんどん伸びはじめました。
それと同時に、塊の別の場所から、緑色のヒモが出てきました。
「あ…これって…」
女王様の両手がするすると女の子の方に伸び、その体を持ち上げました。
「わっ」
緑色のヒモのようなものは、よく見ると、あたらしい芽なのでした。
「この塊、種なんだ…」
女の子は、大きな新芽の葉っぱにふんわりと乗せられました。
そのまま、芽は空に向かってズンズンと伸びて行きます。
女の子は、慌てて地上に残された2人の方を見ました。
2人は手をふっていました。
「また会えるよ」
「また会えるさ」
「ホントに?」
ちょっぴり泣きそうになりながら、女の子は2人にたずねました。
「わたしたちはどこにでもいるよ」
「ずっと◯◯をみまもっているよ」
「「ありがとう、げんきでね」」
「うん、こちらこそありがとう!」
空をのぼるあいだ、リンゴの子の近くも通りました。
リンゴの子は、女の子を見るとニッコリと笑い、
「ありがとう、わたし、ここであなたをみてる、うたをうたう」
と言いました。
芽はどんどん伸びていき、やがて辺りは白くまぶしく、光に満ちていきました。
女の子は、思わず目をぎゅっとつぶりました。
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目を開けると、女の子は、側溝のそばに立っていました。
たくさんの時間をしゅうかくさいで過ごしたように思うのに、まだ空は明るく、太陽も、女の子が側溝に吸い込まれた時と変わらない場所にありました。
ふと見ると、側溝の脇に、何かわからないけれど、小さな芽が出ていました。
女の子は、それを見るとちょっとだけ泣きそうになりましたが、それでも芽に向かって微笑むと、お家へと歩き出しました。
今日はパパがカレーを作ってくれる日でした。
いつものように、リンゴをすりおろして入れてくれるのだろうなと思いました。
おしまい
※みそろぎ人形展は本日3時までです。
皆様お付き合い頂きありがとうございました。
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