「モンスター」(2003・米)
監督・脚本 パティ・ジェンキンス
# アイリーン・ウォーノス:シャーリーズ・セロン
# セルビー・ウォール:クリスティーナ・リッチ
娼婦のアイリーン(シャーリーズ・セロン)は、バーで同性愛者のセルビー(クリスティーナ・リッチ)と出会う。アイリーンの荒んだ様子にも関わら ずセルビーは彼女のことが好きになり、やがて彼女たちは愛し合うようになる。二人の生活のためにアイリーンは合法的な収入源を得ようとするが、彼女の気性 のせいもあって職業訓練を受けておらず世間的な常識もない彼女が職に就くのは難しいことだった。
モンスターwiki
実話を基にした映画である。こういった類は観終わった後、実際の背景などを調べたくなるのが常。今回もまた然り。
まずは13キロ太って眉も抜き、入れ歯も入れて変身したシャーリーズ・セロン。
この作品でアカデミー主演女優賞を手にしている彼女、変身ぶりも勿論なのだが作中の彼女は怖くてとても悲しみにあふれている。
これを観るとシャーリーズがどれだけ彼女に近づいたのかがよく分かる。
生い立ち、環境、勝ち組しか生き残れない社会システム。
彼女はただ生き残るために選択肢のない選択を繰り返しただけなのだ。
勿論、2番目の犯行からは言い訳などできない。愛する彼女の為というのも当然認められるべきではない。しかしその根底にある「男が都合よく女を買 う」システム、一度堕落した(彼女のように堕落せざるを得なかった)人間がどうやっても這い上がれない社会については大いに疑問がわきあがる。彼女は間違 いなく犯罪を犯したが、果たしてそうさせたのは何だったのか。もし彼女にいくばくかのお金があれば、選択肢は増えていたに違いないと思わせるのだ。
実際の彼女の生い立ちの一部はこうだ。
1956年、ミシガン州ロチェスターで父レオ・デイル・ピットマンと母ダイアン・ウォーノスの間にアイリーン・キャロル・ピットマンとして生まれた。ダイアンは15歳でレオと結婚し、キース(1955年生)とアイリーンの2人の子供をもうけた。しかし、アイリーンが生まれる2ヶ月前に離婚 し、彼女が4歳のときに兄妹を捨てて出て行ってしまったため、2人は祖父母に育てられた。
アイリーンは父親に会ったことはないが、彼は精神病を患い、児童を虐待した事もあったためカンサス州やミシガン州の精神病院に入退院を繰り返した。1969年、13歳の少女に対する強姦罪で有罪となり服役中に自殺した。
アイリーンによれば、彼女は祖父から肉体的、性的な虐待を受けた。また祖母はアルコール依存症であった。彼女はかなり若い頃から複数の異性と性的 な関係を持ったと語っており、その中には兄のキースも含まれていたという。14歳で妊娠した彼女は家族から縁を切られ、1971年にデトロイトの病院で子 供を出産。その子はすぐに養子に出された。アイリーンは森の中の廃車の中で暮らすことを余儀なくされるが、後に未婚の母親たちのための施設に送られた。
(アイリーン・ウォーノスwikiより)
ただ生きるために、彼女は身体を売り、ついには殺人・強盗へと落ちて行った。想像するに不幸が不幸を呼ぶスパイラルは世界中で巻き起こっているに 違いない。モンスターとは彼女の事?いや、彼女を底辺に押しやった環境や社会こそがモンスターなのではないだろうか。人間の行く末ってなんだろう・・・と 考えさせられてしまった。悲しい。7点。