リトル・ビッグ・マン。
前から観たかったのだが、かえってこのタイミングでよかったかも知れない。本作最大の悪役カスター将軍に、ある人物が重なるからだ。残忍だが勇猛なカスターだったが、おそらく病気を罹患したため、もはや正気を無くしている。大統領になるべく功を焦り、楽天的な考えのもと無謀な奇襲作戦を決行する。しかし、部隊が壊滅的打撃を受けても交戦を謳う狂人も、狩られる側のインディアンたちに狩られるのだ。そして今、白人優位の差別的な価値観によって生まれた指導者による凶行で世界の崩壊はスタートしたのだ。
 121歳の老人が語る、ネイティブアメリカンたちとの生活を中心とした彼の軌跡はホラ話にも聞こえる。よって先住民たちの英語の会話も気にならない。主人公ダスティン・ホフマンはメビウスの環のように、様々な人と出会い、別れ、再び巡り逢う。それが出来すぎた話に見えないのは、主人公が常に人生の皮肉にぶち当たるからだ。フェイ・ダナウェイが牧師の妻から娼婦に堕ちてしまったように、再会したときは、お互い変わってしまっているのだ。度重なる困難の中でも生きることの意義をこの映画は突きつけてくる。流され、堕落したホフマンだったが、どん底から立ち上がり、機敏な頭脳によってカスターへの復讐を達成させる。100%嘘なのだが、本作はまさに白人によるアメリカ正史を真っ向から嘲笑ってみせたのだ。
 研究によれば人間の身体は120歳くらいは生きることが可能なのだそうだ。ホフマンの長寿は自然の摂理というインディアンたちの教えの賜物なのかも知れない。ラスト自伝を語り終えた老人はひとり取り残される。奇跡に満ちた思い出と共に。