母のこの一ヶ月は、一進一退と言う感じだ。
6月に増悪して、9月いっぱいまでは錐体外路症状や幼児退行、マイスリーの覚醒と、めまぐるしく症状が変化し、概ね改善していった。
4月から現在の主治医である笠原先生へ診てもらうまでの間お世話になった高松のセカンド医には、父の代理で手紙で報告したところ、ご丁寧にもお返事をくださり、胸が一杯になった。
7月から月に一度、母を見て下さっている笠原先生は辛抱強く、あるいは適度に付き合って下さって、これまでマイスリーだけで様子を見ておられたが、この度の11月の診察では、新たな薬としてベゲタミンBを処方された。
この薬については、この更新では割愛する。
この診察で、私は初めて笠原先生にお目にかかったわけだが、御歳87歳にはとうていみえない快活さ、力強さだった。
先生のご著書で、岩波新書の『精神病』を読んでいたのだが、これが目からうろこもののわかりやすさだった。
また、昔の人なので、日本語が綺麗と言うのも読んでいて気持ちがいい。
この本は、精神病の中で最も患者数が多い、統合失調症がメインに書かれているが、それゆえに精神病の全体像が見える。
これまで、母の病気が、統合失調症の一部の症状を呈したことがあったり、内因性の精神病だということも言われてきたものの、精神病の世界について、私は何も知らなかったのである。
これまで、錐体外路症状や幼児退行などの症状が現れては調べて、個々の症状や周辺までは知識を得ることができても、全体がわからずにいたのだ。
また同じく、神経症や精神分析の本は読んでいたものの、母の病気とは重なる部分はあっても、なんだか一致しない、しっくりいかないものを感じていた。
母の病気は、知的障害とも違うようだし、だけれども日がな一日立ちっぱなしで休んで座ることもできず、父から離れることができず、外にいくことができず、家の中でも階段を上って2階にいくことができず、家事は一切できず、たくさん考えることはできないけれどもかつての知識量や記憶力は時々披露できて、週に一度来るヘルパーさんからは隠れて顔を見せることもできない、重大な問題を抱えているはずだが、いったい何が問題なのかわからなくなる、私はそんな悩みを抱えていた。
本の中で、映画『シャイン』で統合失調症の主人公を演じるジェフリー・ラッシュの半狂人の演技が素晴らしくリアリティがあるというので、以前みたことがあったが再び見てみた。
それは、母とは全く違う様子を表しているものの、母と同じ世界に生きる人だった。
この映画は、統合失調症を患った主人公が新たな出会いによって社会性を取り戻すというところが胸を打つ。
私は、本とこの映画によって、精神の病というのは、社会性の障害なんだということがはっきりわかった。
母のうつ病はまだ治っていない。
マイスリーで毎晩覚醒する母は、中途覚醒でうつ病の自律神経の失調症状の苦しみを訴えてくる。
先生は、現在の母の状態を緊張病(うつ病から発症した精神病の中の緊張病症状)と診断しているが、緊張病は非常に治すのが難しいようだ。
社会性の障害ということを考えると、社会的なストレスをなるべく与えることなく、かつ、社会適合していくという一見矛盾した環境が母には望ましいと思うが、同時にとても時間がかかりそうだとも思う。
