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私の妊娠後期に起こった出来事、ヘルプ症候群についての闘病? 出産? 記です。
前のお話は以下よりご覧ください。
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第18話
「ことなさん、大丈夫だったよ! 口唇裂じゃなかった」
我が子を取り上げてくれたのはI医師だった。彼女は、真っ先にそれを教えてくれた。
「ごめんね、心配させてごめんなさい。」
何度も謝る彼女に、どうしてそんなに謝るんだろうと不思議に思いながらも、ほっと安心したのを覚えている。
へその緒が付いたまま、ちらりと見せてもらった我が子は、何やら宇宙人かと思うくらいの青白さで、ぬらりひょんを思わせる頭の長さだった。
産んだ直後、NICUの医師が二人、小児科医が一人、ぞくぞくとやってきた。口唇裂かもしれないということで、I医師が手配していたらしい。
口唇裂がなかったためか、和やかなムードで我が子への処置が行われていく。
H医師は「よくがんばった、本当に上手だったね。良かったね」と私を労ったあと、いつの間にか消えていた。I医師は残り、私の身体への処置を続けながら、また周りの医師たちに「ご心配おかけしてすみません」と謝っていた。
我が子の体重は2300グラムだった。
「じゃあ、未熟児ってことなんでしょうか……?」
そう問いかけると、NICU(だったと思う)の医師は不思議そうな顔をして「違いますよ」と言った。
「私、2500グラム以下は未熟児なんだと思ってました」
「いえ、週数も足りているし診たところ問題もなさそうなので、大丈夫ですよ」
週数と言うのはお腹の中にいた週の数のことで、37週目からが生まれてきても大丈夫な時期だ。このとき、私は38週を迎えていた。
「えーと、じゃあ、……普通の子、ってことですかね」
何と訊けばいいのか悩んだ挙句、変な訊き方になってしまった。問われた相手は苦笑しつつ、
「特に問題はなさそうですよ」
と答えた。
産むまでは、いろんな医師やスタッフが私のために待機していた。I医師も実は自身の勤務時間は終えていたようで、口唇裂かもしれないと診断をした責任を感じて残っていたそうだ。いざというときの手術室も、NICUや小児科医のドクターも全て準備した上で、私たちの出産を待っていた。
それを産後の入院中に知り、I医師に感謝した。
彼女はその後も会うたびに「良かったね」と共に「心配かけてごめんね」と私に言い続けた。
結局のところ、彼女が謝るのは誤診だったからなのだろうか。でも、彼女はあくまでも可能性を示しただけだ。彼女の経験や知識から診断して、最善の手配をしてくれた。楽観的に診断して手遅れになることのほうが私は恐い。だから、感謝すればこそ、恨むのはお門違いだと、私は思う。
病気になるのは医者のせいではない。私に原因があるのだから。
産んでしばらく経ち、入院中に今回のことをメモに記した。夜の授乳の合間にノートを開く。
一体何から書いていいのか、何を書いていいのかわからない。
それでも覚えておくために、気持ちを整理するためにペンを走らせる。
ヘルプ症候群は、結果「疑い」のまま終わった。
口唇裂もなかったし、小さめで産まれたが保育器に入らずに済んだ。
周りに心配を掛けるだけ掛けたが、産み終わったら平常運転に戻った。
母子ともに健康で異常なし。
なんてことない普通を、私はありがたく噛みしめる。
こんなはずじゃなかった。
私のはじめての妊婦体験は、もっと穏やかに過ごせると思っていた。
まだ夜が明け切らぬ朝方、お腹が空いて息子は目を覚ました。新生児のような泣き方から、すこししっかりしただろうか。盛大に助けを求めるその姿に、眠い目を擦り起き上がる。
本当に、あれは何だったんだろう。
手早くおしめを替え、服を整える。
……でも、結果オーライかな。
大変な事になりそうだったけれど、すんでのところで何もかもが無事に済んだ。
それはきっと、我が子のおかげだ。
きみが、頑張ってくれたおかげなんだよね。
本当に、ありがとう。
大好き。
元気いっぱいの我が子は、抱き上げて頬を寄せると幸せの匂いがした。
了