ご訪問ありがとうございますニコニコ

私の妊娠後期に起こった出来事、ヘルプ症候群についての闘病? 出産? 記です。

前のお話は以下よりご覧ください。

 

第1話 事の起こりは

第2話 筋肉痛だと思っていた

・・・

第15話 到着

第16話 耐えに耐える

第17話 はじめての体験

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

第18話

 

「ことなさん、大丈夫だったよ! 口唇裂じゃなかった」

 我が子を取り上げてくれたのはI医師だった。彼女は、真っ先にそれを教えてくれた。

「ごめんね、心配させてごめんなさい。」

 何度も謝る彼女に、どうしてそんなに謝るんだろうと不思議に思いながらも、ほっと安心したのを覚えている。

 へその緒が付いたまま、ちらりと見せてもらった我が子は、何やら宇宙人かと思うくらいの青白さで、ぬらりひょんを思わせる頭の長さだった。

 

 産んだ直後、NICUの医師が二人、小児科医が一人、ぞくぞくとやってきた。口唇裂かもしれないということで、I医師が手配していたらしい。

 口唇裂がなかったためか、和やかなムードで我が子への処置が行われていく。

 H医師は「よくがんばった、本当に上手だったね。良かったね」と私を労ったあと、いつの間にか消えていた。I医師は残り、私の身体への処置を続けながら、また周りの医師たちに「ご心配おかけしてすみません」と謝っていた。

 

 我が子の体重は2300グラムだった。

「じゃあ、未熟児ってことなんでしょうか……?」

 そう問いかけると、NICU(だったと思う)の医師は不思議そうな顔をして「違いますよ」と言った。

「私、2500グラム以下は未熟児なんだと思ってました」

「いえ、週数も足りているし診たところ問題もなさそうなので、大丈夫ですよ」

 週数と言うのはお腹の中にいた週の数のことで、37週目からが生まれてきても大丈夫な時期だ。このとき、私は38週を迎えていた。

「えーと、じゃあ、……普通の子、ってことですかね」

 何と訊けばいいのか悩んだ挙句、変な訊き方になってしまった。問われた相手は苦笑しつつ、

「特に問題はなさそうですよ」

と答えた。

 

 産むまでは、いろんな医師やスタッフが私のために待機していた。I医師も実は自身の勤務時間は終えていたようで、口唇裂かもしれないと診断をした責任を感じて残っていたそうだ。いざというときの手術室も、NICUや小児科医のドクターも全て準備した上で、私たちの出産を待っていた。

 それを産後の入院中に知り、I医師に感謝した。

 彼女はその後も会うたびに「良かったね」と共に「心配かけてごめんね」と私に言い続けた。

 

 結局のところ、彼女が謝るのは誤診だったからなのだろうか。でも、彼女はあくまでも可能性を示しただけだ。彼女の経験や知識から診断して、最善の手配をしてくれた。楽観的に診断して手遅れになることのほうが私は恐い。だから、感謝すればこそ、恨むのはお門違いだと、私は思う。

 病気になるのは医者のせいではない。私に原因があるのだから。

 



 産んでしばらく経ち、入院中に今回のことをメモに記した。夜の授乳の合間にノートを開く。

 一体何から書いていいのか、何を書いていいのかわからない。

 それでも覚えておくために、気持ちを整理するためにペンを走らせる。


 ヘルプ症候群は、結果「疑い」のまま終わった。

 口唇裂もなかったし、小さめで産まれたが保育器に入らずに済んだ。

 周りに心配を掛けるだけ掛けたが、産み終わったら平常運転に戻った。

 母子ともに健康で異常なし。

 なんてことない普通を、私はありがたく噛みしめる。



 こんなはずじゃなかった。

 私のはじめての妊婦体験は、もっと穏やかに過ごせると思っていた。


 まだ夜が明け切らぬ朝方、お腹が空いて息子は目を覚ました。新生児のような泣き方から、すこししっかりしただろうか。盛大に助けを求めるその姿に、眠い目を擦り起き上がる。


 本当に、あれは何だったんだろう。


 手早くおしめを替え、服を整える。


 ……でも、結果オーライかな。

 大変な事になりそうだったけれど、すんでのところで何もかもが無事に済んだ。

 それはきっと、我が子のおかげだ。

 きみが、頑張ってくれたおかげなんだよね。

 

 本当に、ありがとう。


 大好き。


 元気いっぱいの我が子は、抱き上げて頬を寄せると幸せの匂いがした。


            了