トナラーとは、乗り物や映画館などで、他に空いている席がたくさんあるのに、なぜか人の隣に座ってくる人である。

私が、本当の意味でトナラーに遭遇したのは、一回だけ。
二十代後半の頃、私は長野の上田というところに住んでいた。
上田では、バスに乗る人は少ない。みんなマイカーを持っていて、車で移動する。
でも、ペーパードライバーの私は、バスを利用していた。

その日も私はバスに乗った。バスの中は、運転手さん以外誰もいなかった。つまり乗客は私一人。
二人掛けの席しかなかったので、私は入口近くの二人掛けの席に一人で座っていた。
しばらくして、別の乗客、おじいちゃんが乗ってきた。
すると。
このおじいちゃん、なぜか私の横に座ったのである!
「なんだよ、このじいちゃん!」
と内心思ったが、彼もトナラーだったのかもしれない。

そういえば、前の会社で、男の人たちがこんな会話で盛り上がっていた。
昔よくあった(今もあるのかに?)18禁の映画館のナイトショーに行き、映画館には自分一人しかいないのに、あとから入った客が、自分の横にぴったりくっついて座ると。
私はもちろん、そんな映画館に行ったことはないですよ?

話は変わって、私の隣を好んで座る人は珍しくない。
バスや電車の中で、窓側の席が埋め尽くされた頃、通路側に座る人第一号は、私の隣を選ぶということは、何度か話したと思う。
私はそれが嫌で、他のお客さんと同じように、通路側に荷物を置いてもである。
私の顔を見て、ぺこりと頭を下げるのである。
「ここに座るので、荷物をどけて下さい」
という意味だ。
私、そんなに美人かしらwwwww

それに、長野⇔松本を特急で通勤していた時のこと。
会社は指定席のお金なんか出してくれない。自由席回数券のお金だけ。
今みたいに月2~3回なら、自腹を切って指定席を取るが、毎日ではそれもできない。
その日も、仕方なく自由席の窓側に座った。
すると。
私のすぐ後から乗ってきた若い女の子が、どこに座ろうか、という素振りも見せず、何の迷いもなく私の横に座った。
私は、えっ?と思い、思わず彼女の顔を見たら、彼女は困ったようにぺこりと頭を下げた。
「あ、ど、どうぞ」
私はそう言って、彼女と並んで座った。
トナラーさんかに?と思ったが、落ち着いて周りを見たら、始発から来たとおぼしき酔っ払いがいっぱい。
そりゃあ、若い女の子としては、酔っ払いの横には座りたくないだろう。私は納得した。

それから、あれは東京一人旅の時か。
たまに東京へ出た時くらい、リッチなレストランへ行こうと思って、ちと高級なお店に入った。
すると、一人の既にお酒が入っているようなおじいちゃんが店に来た。
このおじいちゃんがトナラーだったようで、私の隣のテーブルに着いたのだ。他に空いてる席いっぱいあったのに!!
しかも、このおじいちゃん、店員さんに片っ端から絡む。
私まで絡まれちゃたまらんと、急いで食べたため、せっかくの高級レストラン、味がしなかった。

あれ?
なんだかんだ言って、結構トナラーさんいるね、私の周りには。