13歳、中一~中二にかけて、私は吹奏楽部の先輩が好きだった。
菊○という先輩だった。

最初は、彼が副部長に推薦されたことだった。
他の先輩たちは、
「もっとふさわしい人がいると思う」
「自分は器じゃない」
などという、もっともらしい言葉を並べて、辞退した。
だけど、彼は一言。
「僕はやりたくありません」
と言っただけだった。
それで何となく、私の中で、「気になる先輩」に昇格した。

そして、中二になる頃、私は彼のことが、本当に本当に好きになっていた。
いつも彼を目で追っていた。
話すことこそなかったけど、中二くらいの恋って、見ていられるだけで幸せじゃない。
毎日部活で彼に会えることが、ホントに幸せだった。

そして。
私はこの気持ちを、誰にも言わなかった。
言えばいじられるし、そんなことで本人の耳に入り、嫌われたら大変じゃない。
かと言って、告る勇気もなく。
ただ、毎日毎日彼を見ていた。

因みに、彼の楽器はトランペット。
吹奏楽部の大半の楽器は、ファースト、セカンド、サードみたいになって、まあ、ファーストの人が主旋律やソロを吹いていた。
私は、彼のトランペットの音色がとても好きだったので、引退するまでファーストでいてほしかった。

ところが。

文化祭も近づく頃、彼はサードに下がり、ファーストを後輩に吹かせることにしたのだった。
私は困惑した。
彼にファーストに戻ってほしい。
でも、どうしたらいい?

私は心に決めた。
一番信頼できる友人に、私が彼のことを好きだと話し、相談した。

携帯などない時代。
結局、匿名の手紙を書いて、彼の靴箱に入れた。

すると。
彼はまたファーストを吹いてくれるようになった!
私の手紙の効果があったのかはわからないが、すごく嬉しかったのを覚えている。

ところが。
それからが大変だった。

私は、彼を思っていることを、なるべく多くの人に知られたくなかったのに。
相談した友人が、部活の最中に、私にメモを回してきたのだ。
それだけならいい。
なんと、回す途中で、男子がそれを見てしまったのだ!
そこには。
「ファーストに戻ったね。良かったね」
と書いてあった。
これで、この男子たちには、私の気持ちがばれたと、愕然とした。

それから、この相談した友人と、もう一人の友人にも、いつの間にか知れていて。
私が話したんだっけ?よく覚えてないけど。

彼もまた、みんなの前で、
「ファーストに戻ったの?よかったねぇ」
と、大きな声で言ったのだ。
「やめてよ、他の人にわかっちゃう」
と言っても。
「大丈夫!」
と、これまた大きい声で言った。
私はもう、困り果ててしまった。

このことで、この二人の友人には、かなり怒られてしまったけどね。
神経質になりすぎだって。

さて。
その菊○先輩のことは、クラスでも知れ渡り始めた。
クラスのある女の子が、そのことを知ったのだ。
そして、みんなの前で、
「菊?」
と言ったので、私は菊○先輩のことを言うのだと思って、彼女を黙らせようと立ち上がり、私達は取っ組み合いをする形になった。
彼女は、私の意思とは裏腹に、教室中に聞こえる声で、
「菊って花があるでしょ? 菊って花があるでしょ?」
と、何度も叫んだ。
私は根負けして。
「わかった、菊がどうしたの?」
と言ったら、彼女は何て言ったか忘れてしまったけど、何とか落ち着いた。
だけど、あとでクラスのみんなに、
「あれは何だったの?」
と言われ、やばいことしたなと思った。

他にも、クラスの男子に、黒板に菊○先輩の名前を書かれて、
「別に好きじゃないもん!」
と、ムキになったことがあったっけ。
因みにこの男子は、前のブログで書いた、ベランダで当時の私の好きな人(菊○先輩ではなく)の名前を連呼した人だ。

まあ中二の子供だからね、私はちと自意識過剰な子供だったし。
(今だって自意識過剰じゃん)

こうして考えてみると、私は自分から好きな人をばらしていたんだね。
今更わかっても後のまつりだけどね。