私はトイレが嫌いだ。
家のトイレはいいけど、会社のトイレは嫌いだ。
トイレで同僚とかち合ってしまった時、変に緊張してしまう。
何か話さなきゃみたいな気持ち。
でも、結局何も話さずに、トイレを後にしてしまう。
「どうしてテレビドラマでは、女子トイレで女の子達が同僚や上司の悪口を言うのだろう」
そんな男子中学生の当初が、ジャンプだったかな?あった。
私はそれを見て、苦笑した。
ドラマの話じゃないんだよ。
トイレは、女子が人の悪口を言うところなんだよ。
新卒で入った会社は、女子が多かったから、特にそんな風に感じた。
それは、入社二年目の春か夏だった。
私がトイレに入ったら、中で私の同期の女の子と、一年下、つまり新入社員の女の子が話をしていた。
二人は、私の顔を見た途端、話すのをやめて目配せした。
私の悪口を言っていたことは、一目瞭然だった。
それ以来、私は会社のトイレが怖くなった。
だから、トイレに行く時、私はいろいろと考えるようになった。
まず、前述の彼女がデスクにいることを確認してからトイレに行くようにした。
彼女は結構、内外で私の悪口を言っていたから。
そして、トイレの入り口。
電気のスイッチが入っていたら、中に人がいるから、入らない。
我慢できない時は、別のフロアのトイレに行く。
電気が消えていたら、安心してトイレに入るというわけ。
私が入社して、研修が終わってすぐ配属になった部署では、怖い先輩と向かい合わせの席になってしまった。
私は彼女が怖くて、会社に来るのが嫌なものだった。
だから、彼女が長期出張に出た時、万歳したかった。
その彼女が帰社報告のために、出社してきた時のこと。
私達の更衣室は二階、仕事場は四階だった。
当時私は、会社に着いてからコンタクトレンズを着けていた。
四階で入れると、彼女とかち合ってしまうかも知れない。
そう思った私は、二階のトイレでコンタクトを入れた。
裸眼のぼやけた景色には、途中から入ってきた人の姿が。
何となく嫌な予感がして、両目コンタクトを入れてみたら、まあまあ。
その怖い彼女が、化粧直しのために鏡を見ていたじゃないの。
私も彼女も、気まずく挨拶して、私はそそくさとトイレを出た。
何のために二階のトイレに入ったんだか、わかりゃしない。
それからも、私はトイレが苦手だった。
入社三年目くらいかな。意地悪な人がみんな別の部署に配属になってからは、流石にトイレに電気がついていても、入るようになった。
入ってみると。
女の子が二人、他愛のないおしゃべりをしていた。
私は黙って個室に入り、用を足し、出てきても、彼女らはおしゃべりをやめない。
私は自分のデスクに戻り、時間を計っていた。
彼女らは、実に一時間、トイレでおしゃべりをしていたのだった!
時間計ってた私も、大概性格悪いがね。
入社三年目のお局様w
こういうことは、一度や二度ではなかった。
なんで、ただおしゃべりをしているだけの人達が苦手なのかというと。
私は、小中高といじめられていた。
小中学校のいじめは、主に男の子にされていた。いわばかわいいいじめ。
高校は女子校だったので、ちと陰湿ないじめに変わった。
その頃から、近くで若い女の子がきゃっきゃ言って笑っていると、
「ああ、私が笑われてる」
と思うようになった。
それは今も同じ。
だから、トイレという密室で、内緒話をしている女の子たちは、尚更苦手なのだ。
今はおかげさまで、女子が少ない会社にいるので、そういう思いをすることはあまりないが、常駐先は、それなりに女子がいる。
昼休みの歯磨きタイムも、実は苦手だ。
理由は、一番最初に書いたこと。
歯磨きでかち合ってしまうと、簡単には逃げられないし、他の会社の人同士で、無言でしゃかしゃかと歯磨きをしていると、何となく気まずい。
でも、昼休みにトイレに誰もいない時間帯なんかない。
そういうわけで、黙って気まずく歯磨きしてくる。
私の考えすぎということはわかっているけどね。
ま、半世紀も生きてるといろいろあるので……。