どうも私は、一人で抱え込んでしまう質なのだ。
「一人じゃ大変だから、手伝って」
が言えずに、損ばかりしてきた。
 
一番最初は、高三の文化祭だった。
私を入れて三人が同じ係になったのだが、他の二人は、係会にさえ出てくれず、みんな私一人でやっていた。
私がそのことで友人に愚痴ると、
「そういうことは本人に言わなきゃ」
と言われたけど、ついに言えずじまいだった。
 
次は短大。
英語を専攻していたので、英語委員というのがあり、私がその委員になった。これまた私を入れて三人。
ここで、英語の講義の時に、テープレコーダーを運ぶのが、我々英語委員の仕事になった。
しかし、他の二人は全然してくれない。いつも私がしていた。
見兼ねた友人が、
「手伝ってもらえばいいのに」
と言ってくれたが、どう言えばいいのか。
「私にばかりやらせないで」
なんて言って、他の人に嫌な思いをさせたくなかった。
 
事態は更に悪化した。
とある教授の講義の時、教授の声が小さくてよく聞こえない。
そうしたら、一緒にその講義を受けていた子が言った
「美伊ちゃん、英語委員でしょ。マイク用意して」
私は半分キレて、
「それは放送委員にやってもらいたい」
と言った。
彼女は放送委員の子にも言ってくれたが、
「英語委員がやるんでしょ」
と、かわされただけだった。
結局、その教授の講義の時は、私が一人でテープレコーダーを運び、マイクの設置をした。
そんな私にみんなは手伝うどころか、
「美伊ちゃん、マイクの位置曲がってるよ」
とか、難癖つけてきた。
「だったらお前がやれよ!」
なんて言えるようなら、苦労はしないんだよねぇ。
 
短大二年になった時、私に全てを押し付けていた、他の英語委員の子が、委員長になった。
私は、
「何で何もしない彼女が委員長?」
と、不思議でならなかったが、さすがに彼女も、委員長なのに何もしないのはまずいと思ったのか、テープレコーダー運びを買って出てくれた。
これで、私はマイクだけ設置すればよくなり、めでたしめでたし。
 
──じゃあなかった。
 
夏休みが終わった途端、委員長はテープレコーダー運びをしなくなった。
その時、教授に注意を受けたのは、委員長ではなく私だった。
それから卒業まで、私のテープレコーダー運びとマイクの設置は続いた。
 
社会人になってからも、いろいろあった。
最初に入った会社では、お客様にお茶を出すことはなかったので、よかった。
次の会社から、お茶出しが暗黙の了解で、私の仕事になった。
私がいれば、私がする。
でも、私が席を外しているときの来客くらい、応対してほしいものだった。
 
その次の会社は、まあ接客業だったから、スキップ。
 
そのまた次の会社でも、私は一人で抱え込むことになる。
その頃は、ちょうど一般の人もケータイを持ち始める頃だった。
PHSなんてのもあったんだよ。若い人は知らないだろうけど。
その会社は、もとはといえば、市外電話サービスの会社だった。
だけど、支店長の独断と偏見で、ケータイのショップを開店した。
ショップの店員は私一人。
次から次へ来る店員の対応を、一人で回せるわけがないよ!
私、ぶきっちょなんだから。
ここでの紆余曲折は、次回のエッセイ本に載せるし、それを基にした小説も、過去のブログにあるので、詳しくは書かないが。
会社中を敵に回す羽目になった私は、心を病んでしまい、会社を辞めた。
あの時、言えればよかったんだ。
「皆さんの協力が必要なんです。皆さんもお忙しいと思いますが、手を貸して下さい」って。
 
そのまた次の会社では、電話番が私の仕事になった。
前述の会社では、一人に一台電話機があったが、その会社は、3~4人に一台だった。
だから、私が取る電話を、他の人が使っていることがある。
そういう時に電話が鳴っても、誰も取ろうとしない。
仕方なく、私が他の人の席へ飛んで行って、電話を取る。
その電話の席の人は、謝るどころか、
「邪魔するなよ」という顔をしている。
そして。上司に至っては。私の電話応対の仕方を一言一句聴いていて、
「そういう言い方をしちゃだめだよ」
と、私ばかりを注意した。
他の人にも電話を取るように言うのが先でしょう!
 
だけど、その辺から、私も、手が離せない時に電話が鳴った時、
「ちょっと出てもらえますか?」
と、言えるようになってきた。
もっと早くなれよ。
 
今でも、電話の取り方を新人に教えたりするのは、私の仕事だ。
電話番そのものは新人がしているが、
新人がいない時は、私が取っている。
でも、それはそれほど苦痛ではない。
やっぱり会社の空気がいいと、
「何か私で役に立てることはないかな」
と思えるのね。
電話番だけじゃない。
掃除当番の班を決めたり、それを掲示板に貼ったりするのも私の仕事だ。
あと、会社で飲むコーヒーの手配とか。
今は逆に、任せてもらえることがありがたいと思っている。
がんばろっと。