子供の頃、小学校高学年から中学にかけては、立候補ばかりしていた。
なんであんなに「役」につきたかったのか。
今思えば、バカだと思われていたし、いじめもあったからかな。
「役」につけば、そういうことがなくなると思っていた。
あと、小学校の時は、私の好きだった男の子が、そういう「役」に積極的につく子だったから、彼に追いつきたいというのもあったんだろうな。


小六の時、児童会の選挙があった。
私は、会長となるとちょっと心配だったから、副会長に立候補した。
だけど、クラスの中で一人しか候補に上がっちゃいけなくて。多数決で、他の子になってした。
私は自分が落ちるなんて思っても見なかったから、涙が出てしまって。
その後の書記に立候補した。
それで、私が泣いていたものだから、みんな同情してくれて? 私がうちのクラスからの書記候補になったんだけど、私は字が上手とはお世辞にも言えない。まとめる力もない。セールスポイントといえば、やる気だけ。
当然の結果、候補者五人中五位の開票結果。しかも、自分のクラスの人以外で投票してくれたのは、三十人弱という惨憺たる結果。
しかも、クラスのみんなには、泣き落とししたとか言われちゃうし。さんざんだったな。
でも、懲りなかった。
委員長、クラブ長などにかたっぱしから立候補して、ことごとく落ちていた。
そんな子だった。


だから、中学に入る時、母に、
「学級委員とかに立候補しちゃだめよ」
って釘を刺された。
どうしていけないの? って言えばよかったんだけど、うちは、親の言うことは絶対。その時は一応返事だけしておいた。
だけど。学級委員になる気満々。
たまたま、小学校で仲の良かったKちゃんと同じクラスになったので、
「学級委員に立候補するからね。私に票入れてね」
って選挙運動?までしていた。
そして、中学に入学し、いよいよ学級委員を決める日。
私は、先生の問いかけに積極的に手を挙げて意見を言い、アピールアピール。
でも、それが仇になっちゃったんだ。
「出しゃばり」「変な奴」ってイメージを、クラス中に振りまいてたなんて、知る由もなく。
いよいよ、学級委員選出の時が来た。
立候補したのは、私と、同じ小学校で児童会長をやっていた子。
どう考えたって、私には勝ち目はない。
案の定、私に票を入れたのは、私自身と、お願いしておいたKちゃんだけ。
あれはショックだった。


それからも、対抗馬のいる選挙で選ばれたことってなかった。たったの一度も。
選ばれたといえば、立候補したのが私一人の場合だけ。
なんでだったのかなぁ。
やっぱり、バカだったんだろうな。
「なんでみんな私をバカだって言うんだろう」
と、不思議で、悲しくて、しょうがなかったけど。
成績がどうこうじゃなくて、そういうところがバカだったんだろう。
今で言うKY。


あれは、中二の時だった。
文化祭の仮装大会に出る、主だったキャストの選出があった。
私はある役に立候補した。
でも。
「美伊さんがいいと思う人」
の、司会者の声に、何人手を挙げてくれたと思う?
ゼロ!
四十四人いるクラスメイトが、あ、私抜かして四十三人か。それだけいるクラスメイトが、誰一人として私に票を入れてくれない。もう自分が情けなくて、恥ずかしくて。
しかも、その時の私の席は一番後ろときている。
みんな、振り返って私を見る。
いたたまれない気持ちでみんなの視線に耐えていたら、司会者の子が言ってくれた。
「自分で挙げないんですか」
って。
彼にしてみれば、というか、みんなにしてみれば、なんで立候補しといて、自分自身に票を入れないんだろうと、不思議だっただけなんだろうね。
でも、私一人だけ手を挙げるなんて、それこそいたたまれない。
私は席を立ち。
「誰も私がいいと思ってくれないのに、やったって仕方ないからいいです」
とか何とか言って、何とかカッコがついたというわけ。
だから、私にカッコをつけるチャンスをくれた司会者の男の子には、今でも感謝してる。


そして、中二の冬。
生徒会の各委員会では、正副委員長が二年生の中から選ばれる。
「正副委員長に立候補するものは、放課後職員室に来るように」
担任の先生がそう言ったので、私も放課後職員室に行った。
すると、先生は言った。
「委員長っていうのは、どうかな?」
私は、なんてことを言う先生なんだろうと思った。
私には、委員長が務まらないっていうの?
そんなことない。私、やってみせるよ。

しかし、正副とも落選。
委員長は6票、副委員長は4票しか入らなかった。


それでも。
ツキは私に回ってきたのである。


委員長が、転校することになったのだ。
補欠選挙で、私は見事委員長の座を射止めた。


しかし、周りのみんなの目は冷たい。
「バカのくせに委員長になった」
学校中に、それこそ学校中に言われた。


そして、委員長という仕事の大変さは、やってみなけりゃわからない。
私は後悔した。
委員長なんか、やらなきゃよかった。


それなのに、どうして私はあんなに何かの役に立ちたくて、立候補していたのか。

大人になった今思えば、私は、信号を出していたんだと思う。
男子にはいじめられ、女子には無視されていた私が。
「私はここにいるよ、誰か気付いて」
って。


余談だが、私がその委員長の座を退く時に、
「もっとちゃんとした人に委員長になってほしかった」
という意見をたくさんもらった。
私は不思議だった。
そんなに私の委員長に不満なら、なぜリコールしなかったのだろう。
答えは簡単。
下手にリコールして、じゃああなたがやりなさいよってことになったら困るから。