みね子と凛子









「夏のお話が書きたいな〜。」


なんて

ふと思った去年の夏




しかも今回は

プロットをある程度立てて

長編を書いてみよう

とか思ったが最後




ただでさえ筆の遅いわたしは

途中でしんどくなって

投げ出しちゃってた




でも

サトルを中途半端に置いておくのは

なんとなくかわいそうだなぁ



と思ってた








そんな時




みねちゃんがね




これ、掲載しよう




って言ってくれたもんだから





泣きながら

何度も何度も

最初に戻って推敲して






みねちゃんのおかげで


なんとか書き終えられました












そして

この長ったらしいお話を読んで下さって


感想をくださったみなさんには

本当に感謝です





物書きをするとき


読み手を意識して書く場合と

完全なる自己満足のために書く場合とありますが




今回は

ハッキリと後者だったので





読んでくださる方がいないのかなぁ


やっぱり

独りよがりな文章だったなぁ







すこーし後悔していたらね






みねちゃんが


みなさんの感想がききたい

って

言ってくれたの




そうして

知ることができた

読者さんの感想



すごく

すごーく

励みになりました





あぁ

なんだろう




みねちゃんはわたし


わたしはみねちゃん






遠く離れたあなたをおもうにつけ


何度

そう感じる瞬間があったか







本当にありがとう












今この時期は

わたしたちにとって



色々リセットしたり

心に養分入れたり

頭の整理をする時間






みねちゃんは


わたしやみんなのために

割いてきた時間を





どうか



自分自身と身近な人に

向き合う時間に

充ててください






いつもありがとう





大好きだよ














ゆっくりできたら







また

可愛くて

せつないお話書いてね








凛子






薄暗い小屋の中で、サトルの顔は、釉薬をかけたばかりの蒼白い陶器のようだった。

そして、真っ赤な唇だけがやけに立体的に生命を感じさせ、その造作をセンシュアルに浮き上がらせている。




僕は、サトルの両肩を押さえ込んだまま言った。

「また、会える。」


サトルは、僕と目を合わせたくないのか、横を向いたまま唇を噛み締めていた。




「また会えるよ。

きみが、遊びに来たっていいんだよ?」


もう一度僕がそう言うと、サトルは幼い子どもが駄々をこねるように、首を左右に激しく振った。

濡れた髪の先から、雨粒がサトルの肩口や胸や、そして僕の顔にもたくさん飛び散った。



サトルは、全身で泣いているように見えた。




思わず、肩を押さえていた両手を背中にまわすと、僕はサトルの震える体を抱きしめた。


そうして、彼の耳許で、

「大丈夫だよ。

もう、大丈夫だよ。」

と、何度も言った。



その時僕は、サトルに向けて発した筈のその言葉が、ドクンドクンと脈打つ彼の柔らかな胸を通して、何故か自らの心の奥に戻って来るように感じていた。


「大丈夫だよ。

もう、大丈夫だよ。」


僕は、サトルに言っているのか自分自身に言っているのかわからないその言葉を、ただ繰り返していた。


自分が今していること…名前しか知らない、出会ったばかりの美しい少年を裸にし、抱きしめていること、孤独な少年を慰めているのではなく、実は自らがその温もりを欲し、望んで招いた状況であるということ…に驚きを覚えつつも、止めることはできなかった。



衝動とはそういうものなのだ。




網が食い込んだ、手の甲のごつごつとした痛みとは対照的に、サトルの背中は驚くほど滑らかで、適度に潤ったシルクのように僕の掌に心地よく吸いつく。

少し空間の出来た、ウエストのあたりまで指を滑らせてみると、サトルはピクンと体を硬直させ、小さな吐息を漏らした。



自分の中に湧き上がった、この生まれて初めて味わった感情を、僕にはもう、到底コントロールのしようがなかった。





僕は、上体を起こしてサトルを見た。



サトルのほうも、今度は僕の顔をじいっと見据えている。

その潤んだ黒い瞳を見つめるうちに、深い海の底に吸い込まれるような、不思議な感覚に襲われた。


挑戦的とも蠱惑的とも取れるその表情は、僕の中で狂ったように湧き上がる、烈しい感情をただ助長するだけだった。


一瞬、島の伝説について触れてきた時のサトルの妖しいばかりの顔つきが頭を掠める。






〈こんなに美しい生物をみたことがない〉








僕は、真っ赤に膨れ上がった肉感的なザクロの実に吸い付いた。



その実は甘く柔らかで、果汁を含んだ内部はねっとりと舌に纏わりつくと、いよいよ僕の脳を溶かしていった。



細く滑らかなその首筋を吸うと、乳白色の肌にみるみる紅いものが浮き上がる。

それは、まるで鱗のような形の痣だった。





きみは…。





サトルは少し恥ずかしそうに、痣が浮かんだ首筋に細く艶めかしい形の指をあてがい、その指をすぅっと、真っ白く盛り上がった胸のところまで滑らせた。


誘われるように僕はその指を手に取ると、そっと口に含んだ。




サトルの瞳の奥に、深く真っ黒な海の底が見える。

甘美な忘我の時に抱かれながら、僕は、そのまま海の底で小さな泡となってしまっても構わないと思っていた。







そうして、僕たちはお互いに見つめ合うと、あとはただ、吐息だけで会話をした。
















…………………………………………………………



僕は、3年前の記憶を辿りながら、窓の外の穏やかな海を行き交う船をぼんやりと眺めていた。




あの翌日、とうとう船着き場にサトルは現れなかった。


ゆっくりと島を離れる渡し船に揺られながら、どこかで寂しそうな表情を浮かべているのか、或いは気持ち良さそうに泳いでいるのかわからないサトルに、僕はさよならを言った。




あの日、僕はサトルに自分の住所や連絡先を書いたメモを手渡して別れたが、この3年間、サトルから連絡がくることはなかった。


島での日々が夢だったかのように、僕には忽ち現実が押し寄せ、相変わらずの忙しい日常を送っていたが、3年前とは明らかに、何かが違っていた。



少しだけ、後輩たちからの相談事が増えたような気がする。
社内での評価も僅かに変わった。上司の小言も減った。実績が不足していても、信頼だけで任される仕事が増えた。

何より、自分なりに居心地のよい立ち位置を見つけられ、溜め息をつくことが減った。




僕は変わることができたのだろうか。




何となく、その答えが見つかるような気がして、再びこの島に来ようと思ったのだ。






階下に降りると、あの時と変わらず真っ黒に日焼けして夕食の準備をしていた女将さんが、僕に気づくと満面の笑みを浮かべて言った。


「お兄さん、疲れとったんなぁ?

まぁ、よう寝た顔して。」




すぐにサトルを探しに行こうと思いながら僕は、昼過ぎに宿に着くなりぐっすりと眠ってしまっていた。あの夢を見るまで。




夕飯時、食堂は3年前とはうって変わり、テーブルがほぼ満席になるほどの宿泊客で賑わっていて僕を驚かせた。

そう言えば島へ渡る時にも、家族連れと若い男女のカップルが同船していた。



鼻歌まじりに食堂を忙しく動き回りながら、僕のお皿にポン、と鯵フライを一匹サービスしてくれた女将さんに声をかけた。

「何か良いことでもあったんですか?」


女将さんは、まるで僕が問いかけるのを待っていたかのように、ふふんと笑うと、堰を切ったように話し始めた。

「あんたが帰んなさった後ねぇ、色々あった

んよ。」




彼女の話では、 2年ほど前から島の再開発が始まり、かつて賑わいを見せたように観光客を呼べる島づくりをしようと、今では島民も活気づいているという。


新しく就任した町長が発起人らしいのだが、その町長というのが、その昔人魚を見たという例の老漁師の曾孫だそうだ。

新町長はこの島の「人魚伝説」を、島民の心の奥に悲劇としてしまいこんでおくのではなく、「人魚に愛された」美しい海と島を広く知らしめ、観光地化しようと考えているらしい。



夕飯後、宿の主人が車で港のあった西側へ案内してくれた。


僕が3年前に見た、寂れたゴーストタウンの面影はなく、小さくも華やかな港町に姿を変えつつあった。

道路沿いには真新しい民宿や土産物屋、居酒屋などが建ち並び、そこから東へ延びる丘陵地は、何軒か宅地の建設の真っ最中だった。

海岸線は整備され、真っ白い砂浜の海水浴場ができており、僕がサトルと「雨宿り」をした小屋があった辺りには、背の高い柱のようなシャワーが数基、設置されていた。



まだ陽が残っていたので、僕は美しく塗り替えられた防波堤まで歩いてみた。

L字型に曲がった防波堤を進んで行くうちに、あの日、雨煙の中ですっぽりと孤独に包まれていたサトルの姿が鮮明に蘇った。




サトルはどうしているのだろう。

今は立派な青年になって、島の人々の役に立つような仕事が出来ているのだろうか。それとも、何らかの事情があって、もうここにはいないのだろうか。


いや、僕が出会った筈のサトルという少年は、そもそも実在したのだろうか。


3年という年月がそう思わせるのだろうか。或いは、その体験があまりにも鮮烈で、あまりにも甘美であったために、現実的な使われ方しかして来なかった僕の脳が、意図的に記憶を曖昧にさせているのかも知れない。



そんなことを考えながらぼんやり歩いていると、後ろを追いかけてきた宿の主人が、嬉しそうに話しかけてきた。

「ほれ。その先よ。見えるかい?」

主人が指をさした防波堤の一番奥には、1メートル四方ほどの小さな石の台座の上に、何やら白い曲線的な物が乗っているのが見える。



近づいて見ると、それは石で出来た人魚の彫像だった。




「これは…。」

僕は思わず息を呑んだ。



真っ白な肌にスラリと流れる鼻梁。小さく突き出た頬骨。アーモンドのような切れ長の目尻にかかる睫毛。少し捲れ上がったように開いた、ぽってりとした下唇。細い首筋。しなやかにカーブを描く背中。


あまりにも、サトルにそっくりだった。



主人によると、町長の曾祖父、つまりあの漁師が晩年、毎日熱に浮かされたように描いていたという人魚の絵が数枚残っており、それらを元にこの彫像は造られたらしい。

人魚は海の方角を向いていたが、少し俯いて思いにふけっているような表情をしている。


サトルと出会った翌日の朝、海岸の大きな流木の上に腰掛けて僕を待っていた、寂しげな彼の姿が思い出された。



島の西側のこの海岸は、遮るものがない水平線を沈み行く大きな西陽を、真っ正面から臨めることが売りだそうだ。

刻々と海を暮れ染めてゆく、オレンジの光を正面に受けた人魚は、その白く冷たい肉体に体温を宿したかのように燃えさかって見えた。




僕は、人魚の足の爪先からヒラヒラと突き出したヒレのような尻尾にそっと触れた。




「もう、寂しくないよ。」


そんな声が聞こえた、気がした。








ほどなく日は暮れ、僕は主人の車で宿に戻った。

その夜僕は、何となく眠れそうになくて、食堂で女将さんとビールを飲みながら過ごした。



「人魚の像、見たよ。」



「ほれぇ。来ると思ってたわ。」

女将さんは、手を叩いて笑った。


「あの頃ねぇ。あんたが見たって、あの、何て言った? そう、サトル? サトルって子に会ったって話、他のお客さんからも聞いてねぇ。そんな子おらんし、何のことだかちょっと気持ち悪うて。考えんようにしとったんだわ。」

女将さんはそう言うと、厨房に立って冷えたビールと夕飯の残り物を見繕ったツマミを持ってきた。


3年前の出来事が、夢だったのか現実だったのか。
日焼けした顔をくしゃくしゃにして、嬉しそうに僕のコップにビールを注ぐ女将さんを見ていると、そんなことは何だかどうでも良く思えてきた。



「あの人魚、とっても綺麗だったなぁ。」


「そうだねぇ。昔は気持ち悪かったけんども、飽きもせんとここにいるってことは、よっぽどこの島が気に入ったんかねぇ。今じゃあ、何だか誇らしいて。」


そうやって僕と女将さんは、日付けが変わる頃まで楽しく会話をして過ごした。







少し寝坊したその翌日、僕はサトルと出会ったあの海岸までゆっくり歩いて行った。

一縷の望みをかけて、あの日のように、女将さんに握ってもらったおむすびと文庫本をリュックに詰めて行ったが、そこにサトルの姿はなかった。


まだ開発が進んでいないという南側のこの海岸の、真っ白い砂浜や背後から迫り来る松林の存在感は、以前と全く変わりなかった。


手付かずの自然が、あっと言う間に僕を3年前に引き戻した。


あの頃の未熟な自分。
海から松林へ心地よく吹き抜ける風に、音もなく同化するような、潮の流れに身をまかせて浮かんでいるような、美しく無垢なサトルの姿にただ圧倒されるしかなかったあの日。



その頃の僕には、あの少年の存在が必要だったのだと、今更ながらに気づく。



サトルは、この海を恐怖の坩堝と化した、美しく妖艶な人魚だったのかも知れない。

それとも、僕自身の不安と疲弊が生み出した、虚像だったのか。


もしかしたら、人生の様々な曲がり角に必ず必要なきっかけ、この海のように、そう、もしかしたらサトルは、すべてを優しく包み込むこの海そのものだったのかも知れない。




夕暮れ近くなるまで、僕は海岸でサトルを待ち、そうして、彼が現れることはないだろうと自分なりに悟り、何となく清々しい思いで宿に戻った。











次の日、予定より早く僕は帰宅の途についた。


以前より少し立派になった渡し船に乗り込むと、離れ行く島の美しい稜線を眺めた。


どこまでも静かに続く海の波間から、チラッと丸い頭が覗いたような気がした。
目を凝らしても見えないような距離だったが、僕の脳裏には初めて会った時の、悪戯っぽい笑みを湛えたサトルの姿がはっきりと浮かぶ。


その姿はやがて波に呑まれ、金色に輝く鱗粉のようなものが、海面を彩った。

朝の光が、水面できらきらと反射しているだけなのかも知れないが、僕にはそんなふうに思えるのだ。




僕は、その辺りからやがて大きな水柱が立ちやしないかと、恐怖と期待が入り混じるような心持ちで暫く水面を見つめていた。









しかしそこにあるのは、どこまでも僕たち人々の営みを悠然と見守る、ただ穏やかで静謐な海の姿だけだった。














(了)




































~管理者より~

人魚だったのね
人魚で
島の皆に疎まれて
寂しくて

でも
島の象徴になって
昇華したのかな

もう
寂しくないのかな

でも
ときどき
人肌が
恋しくて
台だけになってる

そんな夜もあるかも



サトルを抱いて

都会に帰って
人の思いをくむことが
出来るようになり
人として
熟された

サトルを抱いた
その
後ろめたさが
彼の秘密となり

真面目いっぽうだと
小さなミス
誤魔化し
そんなものに
神経が逆立っていたけれど

人はそれぞれ
いろいろ抱えて

ミスもある
誤魔化しもある

そう
思えて
穏やかになれる

主人公の
人としての
熟成を

色っぽく
読ませていただきました

もちろん
被災地の
人たちの辛抱強さ
やがて来たる
再開発の歓び

生きる
生きていく
そこに



匂うような
サトルの存在


素晴らしい
結びでした








パョ

壁|ωΦ):

3年前に
何があったのか

そして
もう一度
サトルの島に戻ってきたボク

綺麗な海
照りつける太陽
潮の薫り
耳に響く蝉時雨

その浜辺に
白い貝殻のように
目につく少年の
情景が浮かんでくる

今ワタシのところは
おりしも雨


小屋の中の二人
落ちる雫
美しいサトル

どこか切ない影を感じながらも
先を期待せずにはいられない



ラッちゃん

みね子さまへ:



完成してまうのがさみちい…


綺麗な情景



艶かしかふたりのおとこたち



匂いまで感じたりしてきたっ!






なにがあったと?

なにをしてると?

なにがどうなると?






知りたい

知りたい

読みたい




です。


燃え萌えっこ

ひとこと:


Love Phantom

春蘭(しゅんらん)

無題:

何度コメしたいと思ったことか!

一番好きなパターンで・・・(//▽//)
自分にそのけが無いと思ってる
知的な年上の彼❤

サトルの神秘的な底知れぬ魅力と
引き込まれていく主人公の心の動きが
丁寧に美しく描かれていて

また、島の自然の描写が印象的で
ここに来ると眩暈がするくらいの
浜辺の強い日差しや
突然の雨を感じて一気に引き込まれます。

次が読みたい!!と思う展開ですうっと
終わっちゃう(*´艸`*)ところが、また。
グゴゴーッ!!てなってます(≧艸≦)
←そこは、みね子さんの編集?w

潮騒の香りにすっかりはまってます。

早く続きが読みたいけど、あんまり早く
終わらせないで欲しい気も❤
ウキウキで、待ってます(//▽//)


はいじ

無題:



恵みでもあり
相反する事象も引き起こす

純粋なサトル
なのに
その瞳に宿る影は
何を意味するのか

彼は どこまで
その押し寄せる影を
抱き締める事が出来たのか


知りたいです
楽しみにしてます


あすまま さん

ただただ息を潜めて見つめていま…

一瞬にして引き込まれた
絵の中の世界

ギラギラと照りつける太陽
潮の香り
美しいサトル

非日常がそこにある
読み進めていけばいくほど
ますます引き込まれる世界

すっかり囚われているようです
海の底に引きずり込まれた
感覚でしょうか?

三年経ってまた訪れてしまった彼
何があったのか?
何がそうさせるのか?
知りたくて
妖しく美しいサトルに会いたくて

続きが読みたいです

余談ですが、父の故郷にそっくりな島
非日常と言いながら
懐かしさが
潮の香りとともに
蘇ってきます




Bm7

無題:

ゆっくりと

時間が流れてて

SATORUの姿

スローモーションで

頭の中で揺らいでるんです


読みたい
読みたい
知りたい
知りたい

溺れたい?


tuna猫 さん

無題

お話…いつも心待ちにしています

紡ぎ出される言葉から
島の情景が目に浮かぶだけでなく
海風や砂浜、雨の感触まで感じれそうです

そして時には『僕』時には『サトル』にと感情移入しながら物語を読み進めています

二人の過去、そしてこれから…
知りたい‼︎ 
めっちゃ気になるぅ~

お話の続きを正座して待ってます♡ m(_ _)m