電話口から聞こえた

「離婚」

という言葉。

その言葉は、私の頭から血の気を引かせた。
心臓の音が大きすぎて、鼓動で自分が飛び跳ねそうになる位だった。

最後の最後まで私の心の片隅で主人を信じていた自分が、
一瞬にして消えてしまった。
私の心が期待していた主人でいてくれる事は、
ただの一度もなく、私の願望だったんだと思い知らされた。

子供達が私の傍にいてくれ、私を抱きしめてくれていた。
子供達の体温が私を現実に戻してくれた。

「…こんなに慕ってくれているお父さん大好きな子供達を、

どう思っているの?
子供達に対しての気持ちはその程度だったの?」

「子供達とは別れたくないよ。
でも俺がいる事で病気が悪くなるんやったら、
いない方がいいやん。
でも子供達とはたまには会わせてや。」

主人の軽い口調に、
私は今まで感じた事のない怒りで全身が震えた。

「離婚したら子供達が一番傷つくって思わないの?
大好きなお父さんやと思っていたのに、
裏切られたって絶対思うよ。
私も小さい頃母親から、
『離婚したらどっちについていく?』
ってふと聞いてきた言葉が今でも残っているよ。
お父さんがあんなんやから離婚すればと思っていても、
実際に親が離婚するとなると、子供はすごくショックを受けるよ。
子供達が苦しんでもいいの?
私の為と言いながら、自分が辛くなってきたんでしょう?
私の親にも電話かけてまで自分がどれだけ傷ついているかって、
言ってたやん。
私だって何度も何度も離婚しようって思ってきたよ。
でも、子供達の気持ちを考えたら、自分が耐えたら…って、
10年以上我慢してきたのに、

あなたは病気になって煩わしくなったら、
あっさり離婚を突き付けて私を切るの?
そして、大事な子供達と言いながら心配してあなたの帰りを今も待っている子供達を切るの?
そんなの大人じゃないよ。
親じゃない…親じゃないよ。
この子達のお父さんはあなただけなのに…
それなのにたまには会わせてくれって、
よくそんなに軽々しく言えるね。
子供達の複雑な気持ちが分からないの?
そんな行動が子供達も私も皆を傷つけていくんやで。
…想像できないの?
あなたの行動は自分を満足させる為じゃない。
残酷すぎるよ…。」

「…それは想像できなかった。
じゃあ離婚したら、もう子供達と会わない。」

主人の一言一言が鋭いナイフで私を突き刺してくる。
恐ろしく自分しか見えていない中で、
軽く判断されていく私と子供達の運命の行方を、
自分で決める事が出来ない自分が悔しかった。


ここまで読んでくれてありがとうございます。
読んで下さった方が、素敵な一日を過ごせる様願っております。