数日後、主人から仕事から帰宅するとLINEが入った。
しかし、帰ってこない…
子供達が心配して電話をかけても出ない。
私も何度も何度も連絡した。

やっと電話に出たので、どこにいるかを尋ねると、

「…どこにいるんだろうな…」

と、言った。
電話の向こうに電車の音が聞こえた。
…最寄りの駅のホームだな。

ご飯も用意しているし、子供達も心配しているから、
早く帰ってきてと言うと、

「俺ってそんなひどい事言ってるっけ?
そんなひどい事してる?」


唖然とした。
それと同時に諦めの気持ちも芽生えた。
この人には共感するという能力がなく、
自分中心でしか考えられない人なんだと。
今まで言ってきた事も悪気はなく、
かといって人をケアするものでも全くないという事。

「もし自分が脳腫瘍と診断されたら、
驚き悲しみ不安になるでしょう。
泣きながら毎日過ごしててベッドからも起き上がれなく位
落ち込む。
それなのに自分の夫が、
『先生が事情を話したらこの新しいビジネス教えてくれるって。
時間合わせて習ってこのビジネス始めといて!』
って、言うのは酷い事じゃないの?」

「…」

「私の事心配してると言うけど、
『病院へ行った?』とか、『病状はどう?』とか、
『てんかん発作も出てるから、一緒に行こうか?』
とか、心配している人なら聞くと思う。
そんな事一度も聞かれた事ない。
だからあなたは私の病気の事なんて、全く知らない。
心配しているなら、
病気の事心配で知ろうという気持ちがあると思う。」

「…俺だって治療しないっていう気持ちを応援している。」

「応援しているっていうけど、行動も言動もないのは、
放置と一緒だと思うよ。
実際私がしんどくて寝ていても一言も声をかけず、
生きていても死んでいてもわからないでしょう?」

「夜に息してるか確認しに行った事もあるわ。」
(たった一度だけ。それも触れる事もなく、
こたつで寝てしまっている私を立ったまま2秒見ただけ。)

「…普通一日中寝ていたら、
『大丈夫か?何かして欲しい事あるか?』

や、
『ご飯は食べれそうか?何か作ろうか?買って来ようか?』
と家族なら聞くと思う。
あなたは、私と話す事も避ける為に子供を使う時もあるでしょう?
そんなの夫婦じゃないでしょう。
私は結局ずっと家政婦以上だけど、家族を感じた事はなかったよ。」

泣いている私に、子供達が抱きしめてくれた。
そして、電話をしている私に代わって
自分たちが出来る事を探して行動してくれた。
お茶碗を洗ったり、お風呂掃除をしてお風呂をわかしてくれたりしてくれた。
終わった後は、私の傍にきてまた抱きしめてくれた。

「…もう引っ越しも決まってる。
俺は一人自分の実家に帰される。
その時に、離婚しよう。」


ここまで読んでくれてありがとうございます。
読んで下さった方が、素敵な一日を過ごせる様願っております。