小学生の頃「飼育委員になりたい」そう思ったあなたも、もう一度思い出してみて下さい。真夏も真冬も同じ環境...冷たいコンクリートや汚い土の上に暮らし、野菜くずや野草...良くてもペレットだけ(牧草がもらえていないうさぎたちもまだまだ多くいます)。また多数の鳥たちとの同居、複数のうさぎを飼育していることによる喧嘩、オスメスを一緒に飼育しての乱繁殖や、オス同士の縄張り闘いの喧嘩、環境が悪く育たなかった仔うさぎたち、水を飲まないという迷信を未だに信じて水をあげていない...そんな光景をぼんやり思い出したりしませんか?

通っている子どもたちの情操教育のために...と学校が飼育する動物たち。限られた予算の範囲内で、給食の残りのクズ野菜などをもらって生活し、怪我や病気になっても病院に連れて行ってもらえないことも多くあります。学校で飼育される動物たちのために近所で開業している獣医さんが顧問として存在していたとしても、うさぎに詳しい獣医さんとは限りません。

・夏休みや冬休み、春休みなど長期の休みがある教育現場で動物の飼育が適していると思いますか?
・草の上を走りまわるためのうさぎのデリケートな足にコンクリートの床が適していると思いますか?
・野菜くずやパンくずだけでいきていけると思いますか?(今は牧草主食が主流です)
・複数いたらオスメスを分ければ安全だと思いますか?オス同士の縄張り争いは血を見ます。
・灼熱地獄の真夏の気温を、雪が降り積もる真冬の気温を、命からがら生き延びて幸せだと思いますか?
・過酷な環境を生き延び、病気や老齢になった時に保護者が引き受けなければいけない状況もあります。
・不適切な環境、怪我や病気で亡くなっていくうさぎたちを見せて、情操教育だといえますか?
・毎年変わる飼育係、担当教員、数年で変わる校長先生などがうさぎたちの一生の責任を持てますか?

一般家庭で行なっている最低限のこと、病気になったら怪我をしたら病院へ、生き物の生態にあった適切な飼育をすること、こんなあたり前のことが、学校によっては全くできていない事が多いのです。飽きっぽい子どもたちは、責任をもってお世話ができないかもしれない。学校の先生も年中行事などに追われ、忘れてしまうかもしれない。そんなことで情操教育と言えるのでしょうか?

うさぎを飼いきれないからと飼育放棄する人の中には、引き取り手が見つからない焦りからなのか...「学校や幼稚園に引き取ってもらえれば幸せだ」と思い込んでいる人たちもいます。でも今までおうちの中でのんびりと過ごしてきたうさぎが、前述のような環境で、食生活で、本当に幸せだと思いますか?

最近は治安の悪化でセキュリティが厳しくなり、一般の人が近所の小学校や幼稚園に安易に出入りしにくくなってきました。私のような子どもを持たない大人では、容易に幼稚園や学校の飼育小屋に暮らすうさぎたちの現状を見に行って、生活環境を改善するためのサポートをすることができません。もし、うさぎと暮らしているあなたに小さなお子さんがいらっしゃり、通われている幼稚園や小学校の片隅にうさぎさんの暮らす環境があるのでしたら、一度覗いてみていただけませんか?

もし環境が適切でなかったりしたら、

① 学校の先生にさり気なく改善要求をしてみてください。「改善する予算がない」と回答されたら、出来るだけ改善するように保護者の方々でサポートしながら、学校での飼育を辞めてもらえるように時間をかけて話し合ってみてください。
② 学校の先生には直接言いにくいのであれば教育委員会に匿名(保護者として)で苦情をいう(「怪我をしているウサギが可哀想なのですが...」「動物愛護法違反に違反しているのでは?」など)という方法もあります。
③ 都道府県(もしくは市区町村)にある動物愛護相談センターに連絡すると、担当の方が現場を見に行って下さり必要な指導をしてくださることもあるそうです。
④ 公益社団法人 日本愛玩動物協会/公益社団法人 日本動物福祉協会などに相談してみる。お住いの地域の近くで、教育現場に指導して下さる協力者を紹介してくださるかもしれません。

うさぎはとてもデリケートな動物で、適切に飼育するだけでもお金もかかりますし、学校飼育に向いている動物とは言えません。それなのになぜか「学校では情操教育のためにうさぎを飼育する」ような何か暗黙の了解のようなものができてしまっています。本当にうさぎの命を思うのなら、幼稚園や小学校での不適切な飼育は辞めていただきたいと思っています。幼稚園や学校で飼育されるたくさんのうさぎたちの尊い命が、不適切な環境下での飼育で奪われてしまうことがないように、願ってやみません。