いちごジャム・スペシャル、普通のいちごジャムの味。市販のと違いが分からなかった。貧乏舌だからかもしれないけどね。悲しい




    

ここまでが感想文




食後は、お土産屋さんを散策した。
この辺りは観光地なので、観光客向けの土産物が多く売られている。
ご当地キャラのグッズやキーホルダー、ストラップなどが定番だな。
「あっ! これ可愛い!」
麻衣子が手に取ったのは、白熊のゆるキャラのぬいぐるみだった。

「何それ? シロクマ?」
「うん、白熊らしいよ」
「へぇ~、可愛いじゃん」
「でしょ? 買っちゃおうかなぁ」
「いいんじゃない」
「でも、高いんだよね……」

ぬいぐるみにしては高い値段だったが、他に目ぼしい物も見つからず、結局購入することになった。
レジに持っていくと、店員のお姉さんがニコニコして言った。

「彼女さんへのプレゼントですか?」
「えっ……まあ……」
「では、彼氏さんがお金を払ってください。そうすれば、彼女さんからのお礼になると思いますし」
「ああ……なるほど」

さすがプロだなと思った。
俺なら、そんなこと考えもしない。

「じゃあ、お願いします」
「はい、ありがとうございます」

俺は財布から一万円札を出して渡す。
レジを打つ手が一瞬止まったような気がしたが、「はい、丁度ですね。こちら商品になります」と袋に入れてくれた。

「どうする? 店出てから渡すか?」
「うーん、なんか恥ずかしいなぁ。家まで持って帰ろうかな」
「そうだな。じゃあ、早く行こうぜ」

店を出ようとした時、後ろから声をかけられた。

「あの……お客様、申し訳ありませんが、もう一度レジに来ていただけませんでしょうか?」

振り返ると、先程の店員のお姉さんがいた。
顔が引きつっているように見える。
「どうかしましたか?」
「いえ、その……」
口ごもる店員を見て、ピンときてしまった。
しまった……。
「何かありました?」
「いえ、何もないです。すみませんでした」

深々と頭を下げる店員に、「じゃあ行きましょう」と麻衣子を連れて外に出ようとしたが、ガッチリ腕を掴まれて動けなくなってしまった。

「…………」
「離してください」
「ちょっと待ってください!」
「困ります。俺達急いでいるんで」
「でも、このまま行かせられないんです!」
「どういう意味ですか? ちゃんと説明してもらえないと分かりませんよ」

店員の顔色がどんどん悪くなっていく。
こいつ、絶対気づいてやがったな! 俺達の会話を聞いていなかったとしても、この状況を見たら察することができるだろう。

「すげぇ、慧カッコいい! ドラマみたいじゃん! 見てみろよ! お姉さん、めっちゃ怯えてるぞ」
「お前は黙っとけ!」
「だってさ、凄いじゃん。女たらしっぽくて、男前! 憧れちゃうわ~」
「お前には無理だ」
「何でだよ! 俺だってモテるんだかんな!」
「はいはい」
「お客様! 私が悪いんです。だから、その方達は関係ないんです!」
「そうなんすか?」
「違います。この人は何も知りません。私が勝手に勘違いしただけです。本当にすみませんでした」


ペコペコと頭を下げ続ける店員さんに、少し可哀想になってしまった。
「とりあえず、事情説明してもらってもいいですか?」
「はい……」


店員さんの説明によると、俺達が買った白熊のぬいぐるみは、お客さんからのもらい物で、レジを通した後、すぐに返品されたらしい。
「えっ? もらったものなのに返したんですか?」
「はい、それが……」
何でも、彼氏と一緒に来たカップルの男の方が、彼女がトイレに行ってる間に他の女の子にプレゼントしていたらしく、彼女さんが怒ってしまい、男が慌てて戻って来てプレゼントを渡したが、彼女は受け取りを拒否した。

「はあ? 何それ。最低じゃん!」
「そうなんですよね……」
男は必死に謝ったが許されず、仕方なくお金を払うことになったのだと言う。