…何がいけなかったんだろう…
頭の中で繰り返す。
私が高齢だったから…
母親が20代よりも30代となると、ダウン症の子が産まれる確率はグッと上がる。
一緒に入院しているお母さん達の中には、私より10歳以上年上のお母さんも何人かいる。
だけど、そのお母さん達の赤ちゃんは普通だ。
…それなのに…なんで私が?
旦那は私より10歳若い。
旦那と出逢ったのは、旦那がまだ10代。私が20代の頃だ。出逢った頃は、まさか結婚することになるとは思わなかった。
長男と次男を連れての再婚。
しかも、10歳も年下。
よく結婚してくれたなーと思う。
旦那は小さい頃から、家が大変で。苦労人だ。
だけど、そんなことは誰にも話していない。
高校生の時ずっと付き合っていた彼女にも話していない。1人で抱えてきた。
だからこそ、本当は私となんて結婚して欲しくなかった。若い普通の子と一緒になってもらいたかった。
…私と…
結婚しなければ…
若い子と結婚していれば…ダウン症の子なんて産まれなかったのに!!
アイツは、年上の奥さんだからダウン症の子が産まれたんだ。若い子と結婚すればよかったのに。
娘がダウン症だとわかったら、世間の人はみんなこう思うだろう。旦那を哀れむだろう。
…ごめんね…
旦那に申し訳ないと思った。
私は元々、子供が出来やすい体質だ。
長男と次男の時もそうだが、今回もすぐに妊娠した。
今回、どうしても女の子が欲しくて、産み分けをした。
ピンクゼリーというのを使った。
膣の中をピンクゼリーを使って酸性にするというもの。
もしかして、それもいけなかったのかも?と思う。今思えば、男の子でも女の子でも。元気に産まれてくれたらそれでよかったのに…
なんでこうなったのか?
どうすればよかったのか?
答えなんてないのに、自問自答していた。
ダウン症について携帯でずっと調べていた。
夜ご飯が部屋に運ばれた。
食欲がなかった。
だけど…食べなければおっぱいが出なくなる…
そう思って、泣きながら食べた。ひたすら食べた。
夜になって、来るはずだった旦那は来れなくなった。1人でベッドにいると、ダウン症のことしか考えられない。
廊下の方で男性の声と小さい男の子2人の声がした。
その3人は隣の病室に入ったようだ。
お母しゃんはー?
1人の男の子は泣いていた。
どうやら、もうすぐ赤ちゃんが産まれるらしい。
ウチと一緒で3人目らしい。
お母さんは1人分娩室なのかな…?
壁が薄いから丸聞こえだ。
…五月蝿い………
障害のある赤ちゃんが産まれればいいのに…
どん底な私は最低なことを思った。
消灯ですよー?
眠れない…?
助産師さんが見回りに来られた。
寝れるわけがない。隣はうるさいし、こんな感情で寝れるわけがない。
今日は授乳はしなくていいからね。
明日赤ちゃんの調子が良かったらしようね。
…調子悪いの…
あぁ…ダウン症だもんね……
寝ろとか無理でしょ。
…わかりました。ありがとうございます。
心の声を悟られないようにした。
自分は不幸だと思った。
それ以上に旦那が不幸だとおもった。
世界中の誰もが不幸になってしまえばいいと思っていた。
私の人生終わったな…
…おっぱいの出を気にしていたくせに…
冷静な自分と、冷静になれない自分がいた。
娘が産まれてすごく幸せだったのが、随分昔のように感じられた。
同じ日の出来事だとは思えない。
今日は長い1日だった。