俺とユリは、この北海道の地を踏みしめていた。
日が傾いて、ちらほら灯りがともり肌寒さから ユリは長く垂れたストールをもう一重 首に巻いた。
『直ちゃん、寒いね。明日さ、いく場所は、極寒だからね。』
『マジで!?』
俺は、そっとユリの手を握る。冷えた指先が、俺の手を握り返した。
『ね、チェックインしたら買い出し行こう?』
『ああ、そうだな。』
俺を見上げるユリは、初めて会った時に見た笑顔だった。
それから、俺達は次の日の買い出しと、レンタカーの手配。そして、今からホテルでパーティーをするというので ユリの言うワインとアテを買い込んでいた。
その時、二人組の女の子がこちらを見ているのに気づく。
『ねぇ、あそこの男の子、格好よくない?』
ひそひそと聞こえてくる声に、耳をすました。
………ヤバそうだ………
『ほらあの人、谷村智也に似てるよ!』
『こんなとこに、いないって(笑)』
……本人ですが………
『直ちゃん?』
俺が固まっているのが わかったのかユリが肩を叩いた。
『連れの女の人が、直ちゃんって…やっぱ別人じゃん(笑)』
『そりゃそうだ(笑)』
関心がそれたのか、視線を感じなくなり ホッとする。
『どうしたの?』
『いやぁ…』
『変な直ちゃん。』
………
ただ、笑ってその場を逃れるしかない。
たくさんの荷物を ほぼ持たされている今の俺は きっとアイドルには見えないだろう。
谷村智也、不覚にもただの男を満喫しております。
『直ちゃん、早く!!』
ユリは、結構 人使いが荒いんだなと、先に行くユリを追うのに必死だった。
結構、ばれないもんだ・・・・
(続く)