化粧品製造受託のコスメサイエンス(本部・埼玉県朝霞市、石渡悦堯社長)が、
福島県須賀川市の特産品「岩瀬きゅうり」を使った化粧水を開発し、
地域活性化に結びつけるビジネスとして注目されている。
都市と地方の格差が注目される中、地域活性化は地方共通の課題。
同社の石渡社長は「地方には有望な素材と戦力がまだまだ眠っている」と話し、
現在も地方特産品の研究と探索に余念がない。(村山繁)
「岩瀬きゅうり」は須賀川市岩瀬地区で生産されている生産量日本一の地元特産品。
緑が濃く甘みがあり、みずみずしいことで知られる。
須賀川市が、曲がって出荷不能になったきゅうりの有効活用策を練っていることを、
市内の工場用地に進出を決めていた同社が聞き、化粧品への加工を提案。
同市が賛同し、財団法人須賀川市農業開発公社との共同開発した。
開発した商品は「胡瓜美水(きゅうりすい)」(120ミリリットル、1890円)。
岩瀬きゅうりから抽出したエキスと、同市長沼地区の天然水、須賀川市の花、ボタンのエキスを配合。
最近話題の保湿成分ヒアルロン酸を含み、着色料、防腐剤などは使わない須賀川発の天然化粧水だ。
同社は「肌をひきしめ、潤いを与え、美白効果もある」と話している。
昨年4月に発売し、当初は初年度6000本を販売する計画だったが、すでに出荷は8000本に達した。
好評なため現在、きゅうりを活用した次の商品を開発中。春には製品化の見通しだ。
コスメサイエンスは石渡社長が昭和60年に発足させた研究開発と受託生産メーカー。
大手の受注拡大などで業績は堅調に推移し、昨年3月期の売上高は単体で11億8000万円。
自社製品を直販する「ドクターベルツ」や、セルフ販売主体の「ドクターエルウィン」も立ち上げ、事業領域を拡大してきた。
ただ、石渡社長は「ビジネスは拡大させるだけではダメ。
従業員、消費者、開発者など、関係者全員が幸せにならないといけない」という。
考えに合わないオファーには、あえて応じないなど独自の姿勢を貫いてきた。
そんな中、須賀川市がきゅうりの活用法を模索している話を聞き、「地域活性化につながり、
自然派志向の消費者の満足も得られる」と判断、開発に踏み切った。
石渡社長は、「日本列島は縦に長く気候の変化に富む。各地でとれる産物も異なれば、そこで求められる化粧品も異なる。
活用できる素材は日本各地に埋もれている」と地域活性化の可能性を指摘。
今後も行政とタイアップしながら地域活性ビジネスを拡大する方針。
現在も3自治体と地元特産品の可能性を模索中といい、自治体や関係業界から注目されそうだ。