法人税
法人税の標準税率は2016年1月1日より20%。原則、暦年が課税年度となるが、管轄当局から事前の承認を得れば、決算期を各四半期末、すなわち3月末、6月末または9月末に変更することも可能。
- 納税義務者
納税義務者は、内国法人と外国法人に大別できる。
- 内国法人:
- ベトナムの企業法、投資法、保険業法等に従い設立された企業
- 製造、卸売業等から課税所得を得る公益団体、非公益団体、協会
- 協同組合法に従い設立され、運営している組合
- 外国法人:主として次の要件を満たす、外国の法令により設立された法人
- ベトナム国内に恒久的施設を有するもの
- ベトナム国内を源泉とする所得を有するもの
- 内国法人:
- 課税対象期間
原則として、暦年が課税対象期間となるが、管轄当局から事前の承認を得て、各四半期末(3月末、6月末、9月末)に変更が可能である。
なお、新設企業または清算企業等で課税対象期間が3カ月未満になる場合、前後の課税対象期間と合算して課税計算を行うことができる。このとき、最初または最後の課税対象期間は、15カ月を超えてはならない。 - 課税所得
- 計算式
課税所得は次の算式により算定される。
課税所得 = 総所得 - (非課税所得 + 繰越欠損金)課税所得を構成する総所得は、次の算式により算定される。
総所得 = (収入 - 損金算入可能な費用) + その他の所得 - 収入
物品の販売、役務の提供、サーチャージ、追加手数料等を含む。収入の認識は、物品の場合は所有権の移転時、役務の提供の場合は役務提供時となる。 - 損金算入可能な費用
「4. 損金不算入費用」を参照。 - その他の所得
事業許可証に記載されていない事業から生じた所得を指し、例として、株式や持分の譲渡、土地の譲渡、固定資産の譲渡がある。 - 非課税所得
農水産業、畜産業およびそれらに関連する事業から生じた所得、科学・技術開発から生じた所得、身体障害者、麻薬中毒者、HIV感染者等の雇用支援事業から生じた所得、少数民族・服役後の受刑者等の職業訓練事業から生じた所得、国内法人からの配当所得、各種寄附金の受け入れ等が非課税所得として規定されている。 - 繰越欠損金
「6. 繰越欠損金」を参照。
- 計算式
- 損金不算入費用
- 損金算入費用
次の3つの条件をすべて満たす場合に限り、損金として認められる。- 事業活動に直接起因および関連すること
- 法律の規定に沿ったインボイス等の証憑を添付すること
- 2,000万ドン以上の取引は、銀行送金等の非現金決済方法による支払証憑を添付すること
- 損金不算入費用
前記a.の全条件を満たしても損金として認められない費用がある。通達78/2014/TT-BTCおよび通達96/2015/TT-BTCに規定されており、詳細は別添のとおり
- 損金算入費用
- 固定資産と減価償却
- 固定資産
企業は、次の3つの条件を満たす費用を固定資産として計上する。- 資産を使用する将来にわたって経済的便益が発生すること
- 1年を超えて使用すること
- 取得原価が3,000万ドン以上であること
- 減価償却
減価償却費は、通達に定める償却限度額の範囲内で損金算入が可能となる。
減価償却の方法としては、定額法、定率法、生産高比例法が規定されているが、定率法および生産高比例法の適用には、一定の条件を満たす必要がある。なお、減価償却適用のためには、事前に、所轄の税務署への登録が必要である。
減価償却期間は、通達に定める耐用年数(詳細は別添のとおり)に従う。ジェトロ:「固定資産の耐用年数表」
(162KB)
- 固定資産
- 繰越欠損金
欠損金の繰越は、発生した翌年から5年間認められる。優遇税制による免税期間も欠損金の繰越限度である5年に含まれるため、優遇税制の適用を受けている場合には、当該期間を考慮したスケジュールの検討が必要である。 - 税率
- 税率
標準税率は、2016年1月1日より20%。
石油・ガス事業に関しては、プロジェクトごとに32~50%の範囲となる。
優遇税制の適用については「8. 優遇税制」を参照のこと。 - 課税対象期間に複数の税率を適用する場合
課税対象期間に複数の税率を適用する場合、課税所得を対象期間で按分して税額を計算する。(例)標準税率を適用し、課税対象期間が2015年10月から2016年9月の場合
法人税額 = 課税所得÷12カ月×3カ月×22%+課税所得÷12カ月×9カ月×20%
- 税率
- 優遇税制
ベトナムの優遇税制は、大きく分けて優遇税率と減免税とがあり、通達78/2014/TT-BTCで次のように規定されている。なお、その他の所得に対しては、優遇税制が適用されないことに注意が必要。- 優遇税率
事業内容や設立地域の性質に応じて、10%もしくは20%の優遇税率が、10年あるいは15年もしくは活動期間中適用される。なお、優遇税率は、対象となる事業から収入が発生した年度から適用される。 - 減免税
事業内容や設立地域の性質に応じて、4年間免税・その後9年間50%減税、4年間免税・その後5年間50%減税、もしくは2年間免税・その後4年間50%減税が適用される。
なお、減免税期間は、単年度で課税所得が発生した課税対象期間から起算される。ただし、減免税の対象となるプロジェクトから初めて収入が発生してから3期連続で欠損金が出ている場合、4年目から自動的に減免税期間が開始される。
- 優遇税率
- 申告・納税
四半期ごとの予定納税と課税対象期間末の確定申告が要求されている。企業は、前年度の法人税額、あるいは当年の業績予想に基づき四半期ごとの税額を予定納税する。仮納税額の合計が確定申告額より20%以上少ない場合、当該差額に対する延滞税を納税しなければならない。 - 移転価格税制
関連者取引がある場合には、ローカルファイル、マスターファイル、国別報告書を作成保存(移転価格の文書化)し、法人税の確定申告時に指定様式(フォーム1)を所轄税務署へ提出しなければならない。- 関連者
次に該当する場合に関連者となる。- 直接または間接出資比率が25%以上
- 一方の会社の貸付または保証金額が他方の資本金の25%以上、かつ他方の会社の中長期借入金残高の50%以上
- その他、事業活動により実質的に支配している場合、個人が複数の会社に対し出資や経営権限があり実質的に支配している場合等
- 移転価格文書化の免除規定
次の要件のいずれかに該当する場合には、文書の作成が免除される。
その場合でも、フォーム1の所轄税務署への提出は必要となる。- 課税期間の売上金額が500億ドン未満、かつ関連者間取引総額が300億ドン未満の場合
- 法令に従う事前確認制度の適用を受けている場合
- 売上金額が2,000億ドン未満、かつ単純な事業活動のみを行い、無形資産による収益費用が生じない場合で、利払前利益率(EBIT÷売上高)が、販売業5%、製造業10%、加工業15%以上の場合
- 関連者
- 主な関連法令
- 法律14/2008/QH12:法人税法
- 法律32/2013/QH13:法人税法14/2008/QH12号の一部修正・補足
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