手術前の心臓カテーテル検査
手術が控えていることを思わず忘れてしまうほど、
穏やかな毎日を過ごしていた。
だけど現実は避けては通れない道を、
静かに突きつけてきた。
心臓の手術——今、目指しているのは「グレン術」。
その前にしておく大切な検査→心臓のカテーテル検査を受けるために、再び入院することになった。
カテーテル検査とは
カテーテル検査では、ただ心臓の中を調べるだけではなく、
ときには「側副血管(そくふくけっかん)」と呼ばれる、体がつくり出した“抜け道”のような血管を見つけて、必要に応じてふさいでいくこともある。
心臓から肺、そして全身へと流れる血のバランスが崩れると、
体は「もっと酸素を運ばなきゃ」と感じて、新しい道を勝手につくってしまう。
けれど、それが増えすぎると血液が分散してしまい、
心臓や肺への流れが滞ってしまう。
だから先生たちは、カテーテルを通してその余分な道に小さなコイルを送り込み、
そっと“ふた”をしてくれる。
——すべては、あーちゃんの心臓が少しでも楽に動けるように。
そして次の手術「グレン術」を無事に迎えるための、大切な準備だった。
涙の点滴室
まず最初の試練は点滴と採血。
『お母さんは外でお待ちください。』と言われて、
ママは廊下で待っていた。
……すぐに聞こえてきたのは、それはそれは大号泣しているあーちゃんの泣き声。
そりゃそうだよね、
人見知り真っ最中の時期に、
あーちゃんにとっては、
恐怖の白衣とマスクの人たちに囲まれて、
痛いことされるんだもん。
でもこれも、みんなあーちゃんの為。
『ちょっとだけ頑張ってねっ。』て気持ちで、
ママも離れて待っていたんだけど…。
なかなか点滴が入らなくて、
あんまりにも泣くもんだから、
『お母さん、そばに居てあげてください。』って医師から呼ばれた。
行ってみると、泣きすぎてサチュレーション(血中の酸素濃度)が下がりすぎて酸素マスクをつけていた。
全身を震わせて大号泣するあーちゃんを見て、
ママも胸が締め付けられた。
ママが強く見守らなきゃという思いとは裏腹に、
気づけば涙がポロポロと…。
ママの頬にも涙がつたっていた。
医師がそれをみて、『お母さん、ごめんなさい。』って気にかけて声をかけてくださったんだけど、
逆に私の方こそ、『大丈夫です。(泣いてしまって)すみません。』
全身麻酔、そしてICUへ
