さまざまな種類の細胞になりうるヒトの人工多能性幹細胞(
)から、肝臓のもととなる「小さな肝臓」を作り、マウスの体内で機能させることに世界で初めて成功したと、横浜市立大の谷口英樹教授(再生医学)の研究チームが発表した。臓器移植に代わる新たな治療法として応用できる可能性があるという。4日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載される。これまで
から肝臓の細胞は作られているが、体内で機能させるには立体構造を作ることが必要だった。谷口教授らは、ヒトの
を肝臓の細胞になる直前の「内胚葉(ないはいよう)細胞」に成長させ、血管を作る細胞や細胞同士をつなぐ細胞と一緒に培養した。その結果、培養皿の中で細胞が自然に5ミリほどの球状に集まり、血管がある小さな肝臓ができたという。この肝臓をマウスの体内に移植したところ、ヒトの肝臓でしか作られないたんぱく質などがマウスの血液から確認された。さらに、薬剤で肝不全にしたマウスに移植した結果、30日後の生存率は、移植しない場合の約30%から90%以上に高まったという。
今後、大人より必要な細胞が少なくてすむ子どもの肝臓病治療に向けた研究を進め、10年以内に臨床研究を目指すという。谷口教授は「小さな肝臓を大量に作って移植し、体内で成熟させる方法で臨床応用したい。それにはiPS細胞の安全性の評価も必要だ」と話す。
『iPS細胞:横浜市大が肝臓のもと作製 マウス体内で機能』
[毎日jp]
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