ここではScratchで先に公開した小説版異世界観光記の一話を紹介しておきます。
何かキャラ崩壊など問題があれば消します。
それでは本編へどうぞ。
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「うぅ...ここは。」
 私が目を覚ますと、そこは見覚えのない場所...。黒いなにかで覆われていて、ソレは空からも降ってきているようだ。
 調べてみた感じでは、色が違うだけの雪のようだ。それこそ凄く寒い。肩出しでズボンもないダボダボのこの服のせいもあるだろう。私ったらこんなもの着た覚...ん?私って?私って誰。何も思い出せない。自分の名前以前の記憶も何も。ヤバイ。これが記憶喪失。
 というか、何で「記憶喪失」とかいう単語は覚えてるのだか。もっと大事な記憶があると思うんだけど!

 特に何かできそうなこともないのでふらふら歩いてみる。だーれもいないなぁ。振り返ると、私の足跡が薄くなっていき、段々と消えていくのが見える。不思議だ。雪が被さるというよりは穴が透明になるような錯覚に陥ってくる。
 そう、この調子で行けば、人の手がかりなんて消え去るだろう。
「まずいな。とにかくがむしゃらに走った方がいいかも。それに暖かくもなって一石二鳥ってやつ?」

 うーん、もう疲れた。
 そうこうしていると...やっと、誰かが近づいて来ていることが分かった。私はコミュ障予備軍なので、気付いてないふりをして相手から話しかけてくるのを待っている。
「あのー、すいません...」
 来た!ここでコミュ障という意識は絶対に植え付けさせまい!

...
「...は、はい、なんでしょう...か?」
 なぜ毎回こうなるやら。私に話しかけてきたその子は続ける。
「信じてもらえないかもしれないけど、私...記憶喪失らしくて、ここがどこか...わからないの。」

 え。これは本当に信じられない...記憶喪失仲間がいるなんて。
 その子はパンドラという名前だった。黒い髪の両側に赤と青のメッシュが入っている。私が言えることじゃないけど、見た目的には幼そう。

「え、ええっと...私も記憶喪失...なんだ。」
「マジですか!終わった...。」
何だとコラ!希望を捨てるんじゃねぇ!
三人寄れば文殊の知恵、だろ?

まあ二人しかいないけどね!

「ちょっとそこの君ら~」
何!フラグ回収が早い!
話しかけてきたのは緑の帽子を被っている棒人間と、普通の人間っぽい男女の二人組...

「何スカ?」
「話は聞いたよ、記憶喪失のお二人さん。僕ら記憶喪失なんだけど...この状況ってかなり異常じゃない?」
たしかに、記憶喪失が多すぎる。この数が巡り会うには、偶然の仕業とは合点がいかない。
「そうね、流れ的に全員が記憶喪失なわけだし、この星?島?がどういう風な場所なのか、まだはっきり分かってないし」
 黒い雪が降るこの地。地平線が近いので、未知の星だとしか思えない。
 しかし呼吸はできる。植物が生息できそうには見えないのだが、酸素はどこから来るのだろう。まさか私たちが全部使いきるなぞは...無いと思いたい。

 棒人間が口を開く。
「自己紹介忘れてた、俺はAa。」
「俺はツr」
「私が先よ!出しゃばってんじゃないわこのバカ兄!」「うわあん、いつもより当たりが強いよ。」
「う、うるさい!...えー、改めまして、ヒカリです。よろしく」
「で俺がこいつの兄のツルギです。」
 ヒカリはまさに光、と言ったように輝いているような美しい外見をしている。金色のその髪は煌めく川のように、その目は悠々と私たちを照らす日を表すように。
 ツルギはまさに漢のロマンといったような感じで、背には大量の武器を背負っており、高いところで結まれた銀髪は柄のようにも見え、彼自身も武器であると伝えようとしているのだろうか。
「えっと、私は...」
そうだ、私の名前ってなんだっけ。思い出せないんだった。
「名前すら覚えてません。」
「マジか~。」
「まあ、気に病むことはないよ白猫さん。」
 Huh?白猫?
「え、何私人間でしょ?ほら、ちゃんと手も生えてる。」
「えーうそ、まさか気付いてなかったの。」
「何?怖い怖い。私クトゥルフ的な感じなの?」
ちょっとタンマ。なんで私、クトゥルフとか覚えてんの?自分の名前が優先だろって!
「違う違う、君は俗にいう『猫の亜人』っぽい外見だと言いたいんだ。」
「えー!」
 確かに、意識してみると上の方についている耳はぴこぴこと動き、尻尾はふりふりとできる。だがどうしてだろう。ないはずの記憶は霧のように『この体ではない』と言っているように、私にまとわりついて訴えかける。
 そういった感じで、私たち記憶喪失グループは何も考えずに楽しく話をしていた。

「そういえば帰る方法探さなきゃじゃないか」
「あっ」
「あ」
「うわぁ」
「ヤダァン...」
 もう帰りたくないよ~。このままお話してたいよ~。