ガンダーラ美術と仏伝 ③ 結婚
 
前回に続いて、「ガンダーラ美術と仏伝」から、弊店で扱った作品を、私の思い出と共にご紹介させていただきます。
 
「ガンダーラ美術と仏伝」 藤代一嘉 著
 
69ページ 図11 「結婚」 ガンダーラ 片岩 2~3世紀について



太子がヤショーダラーと手を取り合い、その前には、火と生命の樹の入った壺が二つ有り、この聖なる火の回りを二人で回る婚儀の場面です。
柄杓を持ち、座っているのは火を管理する司祭(ヴェーダにおける火神)です。
 
パキスタンに次いで、世界最大のコレクションを有する、国内のガンダーラコレクションを調査、厳選し集大成する初の試みとして開催された2007年~2008年に、静岡県立美術館、福岡アジア美術館などで開催された「ガンダーラ美術とバーミヤン遺跡展」に於いても出品紹介された作品です。
 
「ガンダーラ美術とバーミヤン遺跡展」には、東京国立博物館、平山郁夫シルクロード美術館、MOA美術館などの美術館を初め、龍谷大学、阿含宗などから名品の数々が出品され、藤代(伯林寺)コレクションからも十数点出品されました。
 
なかでもガンダーラ美術の仏伝作品では、「結婚」は世界でも比較的珍しいものですが、その中にあって、この作品は最も優れたものでコレクションの白眉とされる作品です。
 
十数年前(2004年)パキスタン人古美術商 B 氏より、この作品を譲り受け、嬉々として福岡まで日帰りの予定でお届けに上がったものの、夕刻からの大雪で、伯林寺の宿坊に一晩泊めていただくことになった思い出の作品です。

 
もう一点は、10ページの「仏頭」ガンダーラ ストゥッコ 3~5世紀です。

この作品は、等身大を優に超える大型の作品で、頭部だけでも31㎝を超え台座を含めると65㎝以上の大きな作品でした。




 
ストゥッコは、石灰と粘土を混ぜた、いわゆる漆喰で、石と違いもろく破損しやすく取り扱いに神経を使いますが、特に配送では危険が伴います。これだけの大きな作品になると、保険を掛けての通常配送では対応不可で、チャーターでの美術品輸送では費用の面でもご迷惑をお掛けすることになるので、鎌倉山から福岡まで、店内より作品を積み込んでの往復2100キロメートルのご配達となりました。
 
鎌倉山を出発し、姫路で一泊しての二日、帰路二日の四日に渡るお届けでしたが、好天に恵まれ楽しい旅の思い出となりました。



慎重に梱包し慎重な運転を心掛けたものの、一抹の不安もあり荷解きの時は緊張しましたが、無事そのままの美しく穏やかな尊顔を確認できた時は、思わず直立合掌していました。
 
長年のコレクションとご研究の賜物であるご著書「ガンダーラ美術と仏伝」は喜寿を超えてのご執筆とのこと、真摯なご研究、ご情熱と胆力を感じさせられました。
 
この度は、ご恵贈ありがとうございました。
 
今後ますますご壮健にて、ご活躍下さいますよう、お祈り申し上げます。