毎日連載小説「2月14日の嘘」 第180話 〜ダメ男、挑発される〜
「何だ、それ? お前、無責任だぞ!」
「お前?」
梶谷ひばりが肉から顔を上げ、眉間に皺を寄せた。
「中途半端なこと言って不安にさせてるだけだろ。最後まで責任を持てよ」
「知らんやん。ウチが言ったわけやないし」 「じゃあ、こいつに訊いてくれ。破くぞと脅せ」
僕はテーブルの千円札を手に取り、梶谷ひばりの顔の前に突きつけた。
「虐待やん、それ」
「生きてるわけじゃないだろうが」
「ヒデがかわいそうやん!」
「うるさい!」
隣のテーブルのカップルが、気味が悪そうにこちらを見ているが関係ない。
「自分で調べたら? どうせ暇やねんから」
「調べる?」
「杏ちゃんに張り付くねん。好きな女を守るのは男の役目やろ」
梶谷ひばりが挑発するように赤い唇の端を上げた。