「遺書を書いた。宇宙飛行士は遺書を書くんだ」

そういって近所の奥さんを笑わせたヒロちゃん

『宇宙兄弟』の受け売りとは後で知った


史上初のジュニア宇宙飛行士を目指すヒロちゃん

とうぜん今朝の天体ショーはテンションMAX


「はれろ、はれろ~!!!」

と、6時半から大騒ぎだ

学校も柔軟に、今日は日食観測してからの登校で良いとしたが


思い届かず、小雨さえ降る空模様

ダメかな、そう思ってヒロのわめき声を我慢してたら

表に出て行ったヒロから

「でたー!すげー!」 と叫び声

みんな外へ出る。あわてて僕もズボンをはいて外へ

7時10分、かけた太陽が見えた

これから金環になるのだろうが

会議があるのでゆっくりもできない

また曇ってしまったそらを見つめるヒロを残して

家をあとにした


うちの周辺は巨大マンション地区

あちこちの階で、公園で、敷地の道路で

子供達が声を上げて騒いでいる


曇ってはいたが、なんだかそれだけで楽しくなった

子供の居る風景は大好きだ


駅前に着いた。 7時30分

また晴れ間が見えた


大分欠けた太陽が雲の後ろに見える

思わず見ていたら目が痛くなった、やばい

サングラスを持っていた事を思い出したが、あまり効果なし


電車にのったら次の駅で急行通貨待ち

7時36分、今はピークのはず

電車を降りてホームの見通しの良い場所に出ると

見えた

薄い雲がフィルターとなって

裸眼で金環日食を見た



夜、家に帰ってヒロに聞いた

「見えたか?」

「うん、俺、見たよ」

「パパも電車から見たよ」

「え?直接見たの?」

「サングラス持ってたけど・・・」

「日食網膜炎になるよ」

「300年後は気をつけるよ・・・・12年後、北海道でみようか?」

「行くの?」

「行けたらね」

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