埴輪落書き帳

埴輪落書き帳

くだらないことを考えるため、日々の出来事、謎の駄文を書くためのチラシ裏。
要するにくだらないことしか書かない、というわけです。
※あからさまな商業的宣伝アカウントさんのコメントは返信しませんが、ありがたく受け取っております。

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前略

中二だから仕方ない。

三話。スタート。


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-百目鬼 千歳-


 急に宗雄さんにぶん殴られてヒリヒリと痛む後頭部を擦りながら俺は前を向いた。先ほどまで署長がなかなかどうでもいい話をしていた壇には新しく泉寺署に配属されることになった者たちが集合していた。
 ……ん?あれは?
「どうした、なんか標的になる娘でも見つけたか?」
宗雄さんが冗談めかして言ったが、俺は生返事しか返すことができなかった。
 薄く茶色がかった髪の毛をポニーテールでまとめたパッチリとした目が特徴の女性が、俺のとある知人に似てたため少し動揺してしまった。
 奴がこんなところにいるはずが無い。見間違い見間違い。落ち着いていけよ、俺。と、自分に言い聞かせて心拍数を制御しようと試みたが、全く無駄だった。体内を激しく駆け巡る血が脳に届くたび、ずきずきと頭痛がする。
 「おい、冗談抜きでなんかあったのか?」
宗雄さんが、今度は本気で心配しているような顔でこちらを覗いてきた。
 頭が混乱していて思考停止していたせいか、口からは勝手に出まかせが湧いた。
「いえ、ちょっと……二日酔いで」
「お前、酒飲めねぇだろ」
「悪酔いするから飲まないだけで飲めないわけじゃねえっすよ。何なら今度ガチめでサシで飲みに行きます?すげーウザイっすよ?俺」
「頼むからそれは勘弁してくれや、お前が暴れたら誰も止められん……まあ、何もねぇならそれでいいや」
宗雄さんはため息を漏らしながら壇上の人たちの方に視線を戻した。
 俺も視線を戻す。壇上では依然挨拶が続いている。丁度スポーツ刈りの青年が自己紹介を終えたところだった。次は誰かと視線を動かしてみると。
 「はじめまして、佐和(さわ) 六法(ろくは)です。ええと……先日警察学校を卒業したばかりで右も左もわからない状態ですが、精一杯がんばるのでよろしくお願いします!」
天然茶髪のポニーテールが俺のよく知っているハキハキとしたよく通る声で、よく知っている名前を自らの名前だと言った。俺は確信を得てしまった。間違いなくこいつは――

 「おいィ!?ちーさん!泡吹いてっぞ!?」
宗雄さんの絶叫がうっすらと聞こえるなか、俺は意識を手放した。


-叢 宗雄-


 「で、佐和さんは」
「あ、六法でいいですよ?」
「お、おう?……六法は千歳の後輩なのか」
「はい」
 千歳の泡吹き事件から数十分。現在オレは正気を取り戻した千歳と件の新人、佐和 六法と共に休憩室のソファを陣取って色々と話を聞いていた。
 これまで聞いた話を大まかにまとめると、「六法は千歳の高校時代の後輩」で「千歳は見ただけでも失神するほど六法が苦手」だということだ。同席はしているものの、千歳が黙り込んでしまっているため全く会話が弾まず、それくらいの情報しか手に入れられなかった。
 「なあ……お前ら高校時代に何があったんだ?」
「何も無かったっすよ」
千歳はそう吐き捨ててこちらを睨む。おお、怖。
 「嘘は良くないですねぇ千歳さん」
そういう六法に一瞬だけ視線を合わせた千歳だったが、すぐに顔を背けてしまった。
 「俺、仕事戻りますから。お先っす」
沈黙に耐えられなくなったのか、千歳はすたすたと部屋を出て行ってしまった。
 残されたオレ達はその後も「何で六法って名前なの?」「親が私を検事にしたかったそうです。ははは」と適当な会話を二、三した。しかし、若者との会話に限界を感じて俺も退散することにした。

 「宗雄サン、とっちめたガキが妙なやり取りを路地裏でやってんのを見たって奴が上がってきたらしいんで。俺行ってきます。じゃ」
午後三時。朝からずっと不機嫌な千歳は一方的に会話を開始、終了して外へ出て行った。
 聴取か。この一年、仕事をしてきてあいつが公私を混同させる奴ではないことは知っているが、少し心配になる。引き止めなくて良かったのだろうか。
 「おー、叢。ちょいといいか?」
オフィスのドアを開けながら署長が話しかけてくる。その後ろではポニーテールがひょこひょこと揺れていた。
 「署長……って、六法も。どうしたんですか?」
「いやなぁ?用件は二つあるんだが、まずは一つ目だ。さっき百目鬼の奴とすれ違ったんだが、何かあったのか?すげー不安そうな顔してて珍しいこともあるもんだなーとか思ってたんだが」
不安そう、だと?てっきり鬼の形相で歩行しているのかと思ったのだが。
 「さあ、何があったんでしょうねぇ」
とりあえず保身を優先してしらばっくれてしまった。
 「そっかい。まあ、なんだ。今のあいつ、去年の今頃の叢にそっくりだぞ?何でもいいから相談にのってやれよ。ってことでそっちの件は以上だ。んでもって二つ目」
 「去年の今頃の叢にそっくり」という発言について思考する間も与えてもらえず、次の話題に移られてしまった。少々戸惑うオレとは対照的に、署長はいつもどおり余裕あふれる顔をしている。
 その余裕そうな顔で何を語られるのかと思えば。
「佐和はお前の班についてもらうことにしたわ。はい以上用件終わりー」
 「まあ頑張ってなー」と手をひらひらさせながら署長は行ってしまった。
 こいつは……オレ史上五本指に入るピンチなんじゃないか?
 冷や汗を垂らしまくるオレに六法は無邪気に「ということで、よろしくお願いします!」と言い放った。

 「なあ、マジで頼むから、高校時代に千歳と何があったのか教えてくれないか?」
軽い事務作業を少し教えた後、六法に訊いてみた。それに対する返事はあっさりと返ってきた。
「はい、いいですよ」
それも笑顔でだ。千歳があれだけの反応をしていたのに、こんなにあっさりと聞き出していいのだろうかと、逆に不安になってくる。
 「まずはどこから話しますかね」
彼女は少し悩んだ様子を見せたが、あまり時間を空けずに再び口を開いた。
 「千歳さんはあんな風でしたけど、そんなに大したことは起きてなかったんですよ?」


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はい。やっぱりね。男臭かったんで。投入しました。

まあまあまだまだ続く予定なんで。

一体何人が読んでいるかは知らんけど一人でも自己満していきまーす。

草々