久しぶりの更新です。


角田光代さんの『八日目の蝉』を読みました。

もう10年以上前に出版され、映画にもなった話題作なので、今さらって感じかもしれませんが。



感想といっても、ほとんど自分語りです。

読んだ後に感じた思いを、ブログに残しておきたかったので、自分なりの感想として書いておこうと思います。


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私は、昔から泣けないタイプの人間でした。

自分と外の世界の間に薄い透明の膜があるみたいに、見えてるのにどこか現実的でない感じがして、感情がその膜から中に入って来ないような感じがしていました。

人と関わる時、特にそうでした。

もし自分の親が亡くなったとしても、現実味がないから、私は泣かないと思います。

ずっとそう思ってきたし、今も思っています。

そして(絶対にあってはならない、考えたくもないけれど)、もし娘の身に何かあった場合、私は泣けるのか。

ずっと自問してきました。

泣けなかったら、私は親になってはいけない人間です。


娘のことは、もちろん可愛いと思っています。

毎日、ほっぺにチュッチュッして、可愛い可愛いって言いながら育ててきました。

でも、心のどこかで、私が母親でいいのかという気持ちがありました。

特にここ2ヶ月はその思いが強かったです。

娘が無事1歳になって、ホッとしたのと同時に、少し疲れが出てきたのかもしれません。

娘が起きてる間は相手をすること、スマホは見ない、テレビは付けない。

その方がいいだろうと考えて、ずっと続けていたそれらのことが、だんだんとしんどくなってきて出来なくなってきていました。

1人遊びをしだすようになった娘をほったらかして、ボーッとテレビ見ながらスマホをいじってしまう日が増えました。

とにかく心が疲れてボーッとしていました。


そんな時に、心底反省する出来事がありました。

娘がインフルエンザにかかってしまったのです。

予防接種は任意だし、別に受けなくても大丈夫でしょ。私もこれまでの人生でほんの数回しかかかったことないし。それもある程度大きくなってからだし。うちに限っては大丈夫でしょ。

そう思って、予防接種を受けさせていませんでした。

言い訳だけど、疲れてボーッとしていたから、育児でこれ以上やらないといけないことを増やしたくなかったんだと思います。

それなのに、予防接種を受けさせいないのに、自分の楽しみのために人混みの中に連れて行ったりしていました。


そして、娘はインフルエンザを発症してしまいました。

3840度の高熱が2日続きました。

ぐったりして、顔を真っ赤にしてウンウン唸って泣く姿は、今まで見たこともない深刻な姿で、「インフルエンザ脳症」という恐ろしい言葉が脳裏に浮かび、私はとんでもないことをしてしまったと思いました。

娘がまだ新生児だった時、「いつか自分の至らなさのせいで、この子にしんどい思いをさせてしまうのではないか」とすごく不安になったことがあるのが、それが現実になってしまったと、とても恐ろしくなりました。

小児科でもらったタミフルを飲ませたら発疹が出たので、タミフルは使えなくなり、高熱に苦しむ時間が余計に長くなってしまいました。

娘に申し訳なくて、「もう私は本当に親になってはいけない人間だったんだ」と、どん底の気持ちになりました。


娘が快方に向かってきた時、なぜかふと「八日目の蝉」という作品を読んでみたくなって、夫が娘をみててくれている間に図書館で借りてきました。

数年前から何となく気になってはいたけど、子供を産んでからは特に「産まれたばかりの赤ちゃんが誘拐される」というテーマが、今の自分には不謹慎な気がして、ためらっていました。

でもこの時はなぜか、「読むなら今だ」と感じたのです。

本当に読んでよかった。

テーマは、「(親子間の)真実の愛、絆とは何か」。

血縁は関係ない。愛をそそぐことが出来る者が親なのだ。

そのようなメッセージを受け取りました。

子供がいる人こそ読むべき本だと思いました。


クライマックスで、薫(映画では井上真央さんが演じる役)が、幼い頃の自分の姿を思い出すシーン。

それが一番心にグッときました。

大勢の見知らぬ大人たちに囲まれ、怯えた様子で港に立っている薫。希和子(永作博美さんが演じる役)はフェリーに乗せられてどんどん引き離されていく。

私は娘と自分に置き換えて想像し、どうしようもなく涙がこぼれました。

この子とは絶対に離れたくない。

私もきっと、希和子が叫んだ言葉と同じ言葉を叫ぶでしょう。


そのシーンを読んで、私の心は軽くなりました。

私が母親でいいんだ。

この子の母親は、私なんだ。

はっきりとそう思えるようになりました。

まだまだ母親1年生。

自分の至らなさに反省するような出来事が、また起こるかもしれません。

でも、今までのような「私が母親でいいんだろうか」という疑問は、これでもう起こらないような気がします。


この作品を書いてくれた角田光代さんには、本当に感謝しかありません。