テーブルに熱々のまま、南部鉄器のフライパンごと。アツアツでトロトロで甘〜い。
トーストの上に乗せて。
彼は、バナナが熱すぎて舌を火傷しちゃった。
そこにちいさなバナナの欠片が。
それは闇夜に浮かび上がるヒラヒラとした白い小さな蝶々に見えた。
そこから私の妄想。
もし、なんのしがらみもない、知り合いもいない南の島で、たった二人で暮らしたらどうかな……
蝶々をみながら暮らしたら。
「きっと、食べるものを作ったり、そういうことは君は何もしなくて俺がやらされるんだろ〜な、ピアノがないとかつまんないとかって、すぐ飽きるんじゃないの。」
「そ〜かな、だけど、そういうときになればやるよ。フェイスブックも見なくていいし、日々過ごすだけで」
蝶々がヒラヒラと島の夜を飛ぶ。
そこでは、満天の星や、海や、今は味わえないものがある
ハワイに二人で行ったときのことを思い出した。
「ハワイで出会った人もみんな意外とiPhoneとかもってたじゃん、フルタリアンなのに」
「そうだったね。ホントのハワイアンじゃないもんね。私達が出会ったのはハワイ的な何か素敵なもの。原住民は、タロイモとか食べてる」
「シャーマンにもあったね。今考えると、奇跡的だったね。あの出会いは。会いたい人に、アポもなく、ただある方に聞いてきました、というだけで、禊の儀式をしてくれた、めちゃいい人だったな」
その記憶から、ハワイ旅のことを二人で思い返す。
飛行機の乗り継ぎのトラブルで、ハワイ島に別々に渡らなくてはいけなくなって、その時に感じた離れ離れになってしまうことへの、あの引き裂かれる思いや、奇跡的に携帯がつながった瞬間があり、再会できたことはじめての土地で、いろんなことがあった。導かれていたとしかおもえない数々の出来事。
その後も、二人は何度も離れ離れになりそうになっては、身を引き裂かれるような心細さにダメになりそうになりながら、今こんなふうに、毎日ご飯を一緒に食べられる日々を送っている。
なんてしあわせなことか。
ボロボロ涙がこぼれてきた。ありがたい。本当に。
一緒にいられるならどこでもいい。
「やだよ、そんなの」「え?!」
「場所は大事だ」
現実的な人だ。どこまでも。
いつもこうやって私が泣くと、彼は茶化す。
今が
しあわせだ。
ありがとう。
本当に。
「もういつ死んでもいいな?」
「え、やだよ〜」
といいながら、もしかしたら、そうかな、なんて思ったりもした。
あとは、おまけみたいなものだから、死ぬまで生きてればいい。
安心。
何かを得て幸せになるんじゃなくて
今までずっとあったのに、わからなかった幸せに気がつくことで、幸せになる。
気がつかなかったバカな私。
よかった、気がつけて。