原題「Good Bye Lenin!」 2003年・ドイツ
東西ドイツ統合後に起こったある家庭の家族物語。 東ドイツに100%の忠誠心を持つ母にショック与えない
ため、東西が統一されたことを母にバレないよう、一生懸命走りまわるアレックスが健気でなんとも言えない。
私の1番好きなドイツ映画です。
あらすじは、
アレックスの母、クリスティアーネは、夫が西側へ亡命して以来、祖国・東ドイツに忠誠心を抱いている。建国40周年を祝う夜、クリスティアーネは、アレックスがデモに参加している姿を見て心臓発作を起こし、昏睡に陥ってしまう。意識が戻らないまま、ベルリンの壁は崩壊、東西ドイツは統一される。8ヵ月後、奇跡的に目を覚ました母に再びショックを与えないため、アレックスはクリスティアーネの周囲を統一前の状態に戻し、世の中が何も変わらないふりをしようとするが…。
ストーリーの原点は史実に基づいたものだけど、そこから次々に起こる展開が、ドイツ映画らしく、回転サイクル
が早く、見ていて全く飽きない。
この脚本家たちは、天才だと思う。 大体、東ドイツに忠誠心を持つ母親が倒れている間に東西が統一してしま
い、母はショックを受けると命が危ないので、あれこれ奔走してわざと「まだ東ドイツ」と母に思いこませる流れ
は、一見考えつきそうかもしれないけど、実際は難しい。
よくこんなストーリーを思いついて、構想をふくらませ、そしてコメディでもなくシリアスドラマでもなく、あれだけ
小気味よく描けたものだ。
ほんと、天才。 見ていてすっごく面白かった、この映画!
主役のアレックスを演じたダニエル・ブリュールは、この作品が大ヒットし、のちにハリウッド映画にも出演する
ようになりました。
ボーン・アルティメイタム、イングロリアス・バスターズにも出演しています。
母は息子のアレックスが反対デモに参加していたのを偶然見かけ、あまりのショックに倒れてしまうのですが、
奇跡的に8ヶ月後、目を覚まします。
でも医者は「これ以上ショックなことをお母さんに与えないように注意してください。次は危ないです」と宣告する。
母が入院中、とっくに東西は統一されかけ、ベルリンの壁は破壊され、象徴だったレーニンの像も壊されようとし
ている。
家の中も外も、絶対に母に完全な統一の目前だということを知られてはマズい。
なぜなら母は東ドイツに忠誠を立てているから!
母の東ドイツに対する忠誠心は、西側に亡命した夫が原因でもあります。
そのことも痛いほど分かっているアレックスは、家の中の全ての最新式の家具、家電、ピクルスのビンにいたる
まで、すべてを「元通り」にしようと奔走します。
家の中が大体OKになると、次は家の外!
外の様子はさすがにアレックスにはどうしようもできませんが、母の部屋から見える景色に少し細工を・・・・。
新聞や、テレビ放送まで、友人に手伝ってもらい、いつもギリギリのところで母に統一を勘づかれないように
あれこれ奔走します。
母の誕生日、母が外出したいと行ったり、次々に沸き起こってくる問題にひたすら取り組むアレックスは、見て
いる私たちを映画の中にいい意味でひきずり込んでくれます。
一緒にあれこれ奔走しているような錯覚に陥り、それがまた見ていて楽しい!
でもアレックスは、東ドイツが統合していたころを懐かしく思うのと同時に、新しく統一されることによって、様々な
環境の変化を自然と受け入れている自分にも気がつきます。
新しく彼女もでき、自分の将来を見据え、本当にこのまま母に本当のことを隠しておくままでいいのか、自分に
問いかけます。
それでも病気の母にショックを与えないために、迷いながら、だけど一生懸命奔走して、母のために、嘘をつき
続けます。
この「嘘」はいつまで持つのか?
いつまで続くのか??
完全な東西統一が目前にせまった時、アレックスは、母は、姉は、恋人は、そして亡命した父は・・・・・。
最後の最後まで目が離せない、めちゃくちゃ素敵な作品です。
母のために一生懸命奔走するアレックスの姿は愛おしく、当時のドイツはこんな感じだったんだと見ている私た
ちに想像させてくれる小気味良い背景、音楽やひとりひとりのセリフがとってもおしゃれで、全てにおいて、最高
のドイツ映画。
もう何度も見直しましたが、こんなに夢中でみたドイツ映画は初めてです。
音楽も、本当にセンスいいんです。 アメリをてがけたティルセンが担当しています。すごく素敵。
そして父がひとりで西側に亡命した本当の理由や、家の中からあるものを見つけたアレックスのシーンや、母の
本当の思いなど、どれをとっても、奥が深く、せつなかったり、笑えたり、泣けたり、感動したり、ジャンルには
分けられないほどの素晴らしい映画です。
宝箱をひっくり返したかのように、次から次へと出てくる意外な「秘密」。
邦画やハリウッド映画に少し飽きたかたには、おススメです。
本当にこの映画、面白い!