ぎゅっと、 | 鏡の花
仕事帰りのバス
2人がけの椅子にカップルが座っていて
女の子が疲れたのか、深く眠っていた
ふいに男の子が
彼女に冷房が吹き付けていないだろうかと
手を当てて確かめる様が
あまりにも愛に溢れていて
毎日の、「愛してる」なんかより
ずっと
その手のぬくもりがいかに
尊いかを思い知り
泣いてしまいそうだったよ
言葉の向こう側って、あるよね
見えないものを
見ようとすることを
あきらめないでいたい
*
4月、の毎日は
ルーティンを愛する私を
酷く疲れさせるけれど
きっと
越えられないものではない
越えようと思うか
そうでないか、の違いだけ
私はまだまだやれる
と、言いながら
涙が溢れるのは
なぜだろうか
みんなもたまには
胸が
ぎゅっと、なるのかな。