大崎善生『ドナウよ、静かに流れよ』 | 花鞠文庫*

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心配性の私が、大好きなものや時について綴っている
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ドナウよ、静かに流れよ (文春文庫)/文藝春秋



オーストリアで亡くなった19歳の女性の足跡を追った、ノンフィクション。

 全編を覆うのは、まるで形のない陰鬱なメロディ。

 つきまとう悲しい符合。登場人物たちのすれ違う感情。膨れ上がる負のエネルギーの連鎖。止まらない歯車・・・。







 著者は、亡くなった女性の気持ちを知ろうと試み、その念だけで書き上げたような印象。日本、ルーマニア、フランス、オーストリア。家族愛、友情、恋愛、同士としての愛。彼女を軸に物語は廻って行きます。

 著者の洞察、家族の気持ち、彼女の行き方、どれにも正解はなく、また読者から見て正しいと思えること、思えないことが入り混じっている。


 事実という重石があるからなおさらきつい。心が弱っている時は、読まないほうがいいと思います。あてられてしまう。