1,独白、15分のスピーチ
俺は、他人の歴史を生きる、祖国のない、真白い国旗だった
歴史に何の意味がある、歴史は俺に、皆殺しの星条旗をかかげる、
正統化をされた抑圧、
歴史は、
場末のダンス・バーにかかる一曲の歌に紛れた、
掠れた旧い
映画だった、
映画の始り、終りには、
何物をも映さない白いスクリーンが、残される、
俺は、アメリカなんか嫌いだ
ハリウッド映画が嫌いだ
クライスラー・ビルが嫌いだ
あの趣味の悪い色彩感覚が嫌いだ、
その白いスクリーンの後を聞かせてちょうだい、
そう、囁く
無理な話だ
映画が終れば、俳優も、梗概も、何一つ残りはしない、からだ、
ただ、彼らの自由が見せ掛けの子供騙しに過ぎなかったことが、
誰にも明らかとなるだけだ、
富裕と貧困
強者と弱者
距てられ、分極された尊厳、紙幣に左右される、自由、
人間が、
俺は、嫌いだ、
2,偽造交通許可証
時代は水爆の喉を孕み
巨人、
ニューヨーク
経済紙
ウォールストリートジャーナル
金融街
土地は肉体労働者を産む
助産婦達の
一世一代の見世物、
曲馬団への音響機構は詳らかな強姦魔の手管を哂い
慰みの轟音を起てて
大暴落へと
正義の突撃を期せよ
崩壊した
麦粉一ポンドは紙幣一束
愛の歌は15セント
燃えた燃えた燃えた
時代は褪色した
スクリーンの
中から
大観覧車へ
斧の、
一撃、を
3,_
燃えた、機関紙を、見下ろしながら
俺は、昔、蚕を飼っていた事を思い出していた
狭い一個の箱を
這い回る醜い芋虫
お前には自身を支える脚が無い
支え得る
翅が無い
国籍が無い
権利が無い
故郷が無い
そう、
帰る家なんて、始めから無かった、
食餌として、抛られた
お前は、
自分では匙一つ持てない、
狭い木の箱から、出ることさえできない、
醜い芋虫、
蛾に孵る前に、
茹で上げられっちまう、
お前はもう、飛べないだろう、
お前はもう、飛べないだろう、
空を仰ぐ、自由
フィルムより投影された、薄っぺらい、映画
尊厳など、端から
俺には、与えられてはいなかったんだ
直にこの映画が終ってしまう、から
その前に、
白色人種の傲慢な鼻っ柱よ
コカコーラの洪水よ
神経症の婦人会会員達の猛り狂った批難よ
偽りの多様性と欺瞞に満ちた社会精神よ
非差別主義者達の嘘っぱちの理解よ
無差別爆撃に飛散した叛殖民国家抵抗運動家達の肉片よ
自然保護公園の火事よ
汲み上げ撒かれた地下水よ
プランテーションの黒色人種達よ
ファットスプレッドの生ぬるい溶解よ
映像広告に刷り込まれたイデオロギーの空疎よ
爆心地9月11日に
激昂した群衆心理よ
テロリストを撃てと傾れに傾れた実験国家よ
今、
決して悪夢ではない
流亡の群衆のゆくあてに、
世界化された襤褸切の星条旗 を見せてくれ、
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