パチンコ店員になって半月しか経ってない私は先輩たちのご指導の元日々仕事に励んでいました。

今日は感謝デーでいつもより忙しかった。
鳴り響く呼出音、声が重なり合うインカム、おしゃべりなおばあちゃん……。

そして、あるお客さんに出会ってしまったのだ。

呼出音が鳴っている場所が私の居るところからちょうど真逆、店内で1番遠い場所にある席だった。

私より近い店員はいくらでも居た。だが生憎みんな同じタイミングでお客様対応に追われていた。

(みんなのピンチは私の輝く瞬間!行くぜ!)

そんな呑気なことを思いながら私は急いで反対側の位置まで回った。
すると大当たりのお客さんだった。

(うわ、まだ大当たりの対応の仕方教わってないんだよなぁ……)

大当たりの時は通常と違って電源を落としたり、大当たりの画面が終わってはいけないのである。

とりあえず私はインカムで対応出来る先輩を呼んだ。その時。

「大当たり終わっちまったじゃねぇかよ!」

バンバン台を叩き始めた。まるで鈴木奈々の風船割りのようなリズムであった。



すると応援に来た先輩がお客さんにヘコヘコしていた。私には「ここはいいから戻って」と言われたので私は速やかに戻って行った。

数分後インカムから私の呼び出しがかかった。


呼び出したのはさっきの席の
イカルドのおじさん……いや前歯の無いお客様。





「お前が先に来てたんだろ!お前が謝れ!!」


口を大きく開けたその人は

黄色い歯が1本しか無かった。


確か謝る時は誠意を見せるために

胸を張って顎を引くんだっけ。


「申し訳ございませんでした。」


渾身のミスだった。私は慣れてないせいか顎を思い切り上げてしまった。これではオードリーの春日だだ。



この時の私は業務をこなそうと必死だったのでこの時の脳はこれが正しいと思っていた。


それでも説教は止まらない。

そして私の春日スタイルも止まらない。


もしかして今の聞こえていないのか?

ここは音がうるさい、ならしょうがない

もう一度言うか。


「申し訳ございませんでした!」


私はもっと誠意を見せようともっと胸を張って、

顔がちゃんと見えるよう首を前かがみにして大声で言ってみた。


後から他のアルバイト生に聞いた話だが、

その時の私の首の角度はコロキチの卓球ネタ並に煽っていたと



一瞬お客さんの説教は止まったが、

まだ説教止らない。

どうしたら怒りを沈められるんだろうか。

学生時代の部活風景を思い出した。

顧問が「帰る」とすぐ言い出す人で

部員のみんなで「お願いします!」「もう一度やらせてください!」「ご指導お願いします!」

と必死になってたもんだ。


それを今見せるときでは?



私は目をかっぴらいて口を大きく開け


「申し訳ございませんでしたぁ!!本当に!誠に申し訳ございました!!!」


最後の一言は間違えてしまった。


そのままふと、壁の鏡を見ると



響がいた。

有機野菜・無添加食品の宅配ネットスーパー【らでぃっしゅぼーや】


そのまま目線をお客様に戻すと

私の顔が余程酷かったのかお客様は突然黙り込み少し顎を引いて唾を飲み込んでいた。


するとちびまる子ちゃんの山根くんみたいな社員の方がやってきた。



「お、お客様、どぁどうされましたか……!!」


するとお客様は我に返り標的を変え

そっちを怒鳴り始めた。

社員は私に仕事に戻るように合図をして

私はその場を後にした。


だがお客さんはまだ帰っていなかった。


インカムで山根社員とお客さんの様子を

聞いているとどうやら

「本社にクレーム入れてやる!」だの

「お前の名前教えろ!」だの

困らせていたみたいだ。

山根社員はお客さんとスタッフルームを

行き来していて大変そうだ。


お客さんが山根社員を待っている時

目の前を歩いていた私を見ると

パチンコ玉を投げてきた。


私はそれを拾って「落としましたよ」と

笑顔で玉を台に返してあげた。


お客さんは拳を作りプルプルしていたのを覚えている。まさにトモコレの怒り奮闘のアレだ。



そしてお客様が帰った後、

腹いせなのか警察を呼んでいた。


警察の方は直ぐに帰られたが、

すごい客もいるんだなぁって思いました。