重度の難聴の人と話していた時のこと

その方は当時、発声がまだ学習中で、声がでかくなったり、聞こえないくらいに小さな音があったりした。


途中からその人は何かを思い出して、機関銃のようにまくし立ててきたのだが、声がそんななのでちょっと聞きづらい。すごく一所懸命説明してくれているのはわかる。ただ、私としては、同意も承諾もできかねる話だった。それで私は話を聞くだけになった。


そしたら突然、その人が、「バカか?バカか?」と言い始めた。私に向かって「なんで答えない。お前バカか?」

話が逸れている。「聞こえないのか?」とも言ってくる。


聞こえているのだけど、


私はその人の目を見て、ゆっくりはっきり口話を始めた。

「あなたの話はわかる。けど、要望には応えられない」

その人は「あ゛あ゛あ゛あ゛〜」と叫んできた。

「頼めば聞く(聞き入れる)もんじゃないのか?」とも言ってきた。


私はその人の目を見て、はっきり口話で返した。

「そう、聞けない。お断りします」

またその人は叫び声を上げて、次の人のところに行った。なんでだなんでだ、と言っていた。


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親しくもない人から、「化粧したいから口紅貸せ!」と言われた話でした。




この方はご家庭の事情で、ろう学校でのサポートが遅れた方でした。学習意欲も高くたいへん努力したから手話も口話もぐんぐん発達し、語彙も多く知能は高いのだけど、社会通念的なものが比して幼稚だった方です。



その後もたいへん努力して、いまや立派な紳士です。

専門教育は、私は必要だと思っています。