時々妄想するブログなのでお話を少しばかり・・・
若干、腐っぽい要素がありますのでご了承下さい。
チャンギュンさんとウォノさんのお話です。
side:チャンギュン
大雪で歩くこともままならない街で、ヒョンがコートも着ずにいるのを見かけた。
学校は休みで、その休みを利用して母親のきっと誰もいないだろう個展会場に行って驚かそうとしていた渋滞中のタクシーの中で。
真っ白なぶかぶかのフーディで、袖から指先だけが見えていた。
夏の間に染めた髪色は、髪の先にだけ名残りをとどめている。
黒のスキニーデニムの膝から下は雪に埋もれていて、寒いのだろう、自分を抱きしめるようにして立っている。
学校でのヒョンは喜怒哀楽の激しい人で、たまに見ていてこちらが不安になる時がある。
委員会で一緒になって仲良くなったが、よく笑ってよく泣いて、子どもみたいな人だ。
今も笑っていたら、雪に喜ぶ子どもみたいな人だと笑っていただろう。
でも、ヒョンは泣いていて、分厚い唇が真っ赤になって、時々ぎゅっと閉じられるのが見えた。
窓を開けたら、ヒョンの泣き声が聞こえるだろうか。
この雪で街の音は吸収されて、ヒョンの声だけ聞こえているのだろうか。
今、そばに行けば、まぶたを腫らした涙目のヒョンが俺を見るだろうか。
コートを忘れて、また降りだした雪さえ気にせず立ち止まったままのヒョンが。
曇り始めた窓を手で拭くと、真っ白で消えそうなヒョンが現われてはまた消えた。
まだヒョンはひとりで泣いている。
すべて消え入りそうな白い世界で、自分を抱えて、ひとりきりで。
温かいコートを掛けてあげるだけでもいい。
俺だと気付かないとしても。
運転手にドアを開けてもらおうと、声を掛けようとした時、目の端にすっと影が横切った。
窓の曇りをコートの袖で拭った。
黒いコートを着たその人は、ヒョンのよく着ている真っ赤なダウンジャケットを脇に抱えて、ヒョンの目の前に立った。
俯いていたヒョンが顔を上げてその人を見た。
その人がヒョンの頬を両手で包んだ瞬間、泣くヒョンの口角が上がった。
泣きながら笑うヒョンはその人の手に自分の手を重ねると、たぶん寒いと言った。
その人がダウンジャケットをヒョンの肩に掛けた。
温かそうに長く息を吐いたヒョンの手をその人が掴むと、ふたりは雪を気にすることなく歩き出した。
頼んで窓を少し開けてもらった。
僅かな隙間から冷たい風とすぐに消える雪が入り込んだ。
雪は街中の音をやっぱり吸収して、静かな空間がそこにはあった。
ただ微かに雪を踏みしめる音が聞こえて、なぜか泣いてしまいそうで胸が痛くなった。
若干、腐っぽい要素がありますのでご了承下さい。
チャンギュンさんとウォノさんのお話です。
side:チャンギュン
大雪で歩くこともままならない街で、ヒョンがコートも着ずにいるのを見かけた。
学校は休みで、その休みを利用して母親のきっと誰もいないだろう個展会場に行って驚かそうとしていた渋滞中のタクシーの中で。
真っ白なぶかぶかのフーディで、袖から指先だけが見えていた。
夏の間に染めた髪色は、髪の先にだけ名残りをとどめている。
黒のスキニーデニムの膝から下は雪に埋もれていて、寒いのだろう、自分を抱きしめるようにして立っている。
学校でのヒョンは喜怒哀楽の激しい人で、たまに見ていてこちらが不安になる時がある。
委員会で一緒になって仲良くなったが、よく笑ってよく泣いて、子どもみたいな人だ。
今も笑っていたら、雪に喜ぶ子どもみたいな人だと笑っていただろう。
でも、ヒョンは泣いていて、分厚い唇が真っ赤になって、時々ぎゅっと閉じられるのが見えた。
窓を開けたら、ヒョンの泣き声が聞こえるだろうか。
この雪で街の音は吸収されて、ヒョンの声だけ聞こえているのだろうか。
今、そばに行けば、まぶたを腫らした涙目のヒョンが俺を見るだろうか。
コートを忘れて、また降りだした雪さえ気にせず立ち止まったままのヒョンが。
曇り始めた窓を手で拭くと、真っ白で消えそうなヒョンが現われてはまた消えた。
まだヒョンはひとりで泣いている。
すべて消え入りそうな白い世界で、自分を抱えて、ひとりきりで。
温かいコートを掛けてあげるだけでもいい。
俺だと気付かないとしても。
運転手にドアを開けてもらおうと、声を掛けようとした時、目の端にすっと影が横切った。
窓の曇りをコートの袖で拭った。
黒いコートを着たその人は、ヒョンのよく着ている真っ赤なダウンジャケットを脇に抱えて、ヒョンの目の前に立った。
俯いていたヒョンが顔を上げてその人を見た。
その人がヒョンの頬を両手で包んだ瞬間、泣くヒョンの口角が上がった。
泣きながら笑うヒョンはその人の手に自分の手を重ねると、たぶん寒いと言った。
その人がダウンジャケットをヒョンの肩に掛けた。
温かそうに長く息を吐いたヒョンの手をその人が掴むと、ふたりは雪を気にすることなく歩き出した。
頼んで窓を少し開けてもらった。
僅かな隙間から冷たい風とすぐに消える雪が入り込んだ。
雪は街中の音をやっぱり吸収して、静かな空間がそこにはあった。
ただ微かに雪を踏みしめる音が聞こえて、なぜか泣いてしまいそうで胸が痛くなった。