チャンミンはジェジュンの事務所に来ていた。

本格的に考えているカナダのエージェントと、メールなどでやり取りを始めた。

英語が分かるジェジュンだったが、契約などの難しい言い回しや意味をチャンミンに尋ねたり、交渉する場合は何に気を付けるべきか、などのアドバイスをもらっていた。

 

「チャンミン、ありがとう。やっぱり難しい言葉が多くて…助かったよ」

「普段使わない言葉ですからね。専門家は必要ですよ」

 

打ち合わせの後、いつものようにホテルの高級鉄板焼き屋に行き、個室で飲むのが定番となっていた。

 

お気に入りのワインを飲み、少し頬を赤らめたジェジュンは誰よりも綺麗で。

チャンミンは眼福だ、と思いながら、美味しい料理に舌鼓を打った。

 

「それで、カナダには行くんですか?」

「うん、行きたいと思ってる。ただ、こっちのスケジュールも無視できなくて…」

「少しお疲れのようですね」

「まぁ…自分の我儘通すには、無理もしなきゃね。僕がカナダに行けば、仕事が無くなるスタッフが出てくる。その分、今稼いでおかなきゃ…」

 

チャンミンはサーロインを切りながら、うんうんと頷いた。

 

「アナタもユノ兄もしがらみが多すぎますね」

「仕方がないよ。一人でここまで来られたわけじゃないからね。恩は返さなきゃ…」

 

「ユノ兄とは?連絡とってますか?」

「ううん…あっちも忙しいみたいで…。そもそもユノってメールとかくれない人だから」

 

寂しそうに俯いたジェジュンに、思わず手が伸びそうになった。

 

「寂しいですか…?」

「うん…すごく寂しい…。あんなに長い間会えなかったのに、一度会ってしまえばたまらなく会いたくなる」

 

素直に寂しいと吐露するジェジュンは、たおやかな一輪の花のようで。

伏せられた大きな目や、筋の通った鼻、柔らかそうな髪が目の前で揺れている。

思わずその髪を撫でて、優しく肩を抱いて、支えたくなってしまう。

 

 

…危険な人だ…美しすぎる…。

 

 

チャンミンは、ブンブンと首を振って言った。

 

「カナダに行けば、少しはゆっくりと出来るんじゃないですか?ユノ兄と一緒に行けばきっと楽しい時間が待ってますよ」

 

「そう…かな…」

 

「えぇだからもう少しだと思って、頑張ってください」

「ん…」

 

まだ元気がないジェジュンに、チャンミンは何とか笑って欲しかった。

 

「そもそもユノ兄はメールが苦手ですからね。文字を打つのが遅くて、横で見ていていつもイライラするんですよ。その姿はまるで爺さんのようでね…」

 

メールを打つ仕草を大げさに見せてやると、ジェジュンは目を見開いてフフッと笑い、チャンミンはやっと笑ったジェジュンにホッとした。

 

「アナタは笑っているほうがいい」

「…ユノに伝えてくれる?僕も頑張ってるから。ユノも無理しないでって…」

「えぇ、必ず伝えますよ」

 

 

 

やっと会えると約束を取り付けたが、ジェジュンがユノのマンションに着いたのは深夜1時を回っていた。

撮影が押してこんな深夜になってしまった。

ユノ、きっと寝てるだろうな…。

 

ふと頭をよぎったのは、今日聞いたいつもの噂話。

 

芸能界と暴力団の関係は今も根強い。

昨今の暴力団排除の流れから、決しておおやけにはできないが暗黙の了解の関係が確かに今もある。

 

今も昔も嫌でも入ってくる噂話に、ユノの実家の話があった。

 

光州での恐ろしい武勇伝、伝説のように語る継がれる抗争劇、みんな口を揃えて言う「血も涙もない連中だ」「決して関わってはいけない荒くれもの」「光州の武闘派軍団」

 

恐らく噂のほとんどは、みんなが面白がって尾ひれがついた悪い噂なんだろう。

だが武闘派だったというのは本当らしい。

 

ふと思う。

ユノは本当に組を抜けられるんだろうか。

もしかして、それはとても危険な事なんじゃないだろうか。

 

自分がそれを望んだばっかりに…ユノにもしものことがあったら…。

 

だがチャンミンは言った。

 

「彼には光の下で生きて欲しい」

 

きっと彼はユノのために尽くしてくれるだろう。

勝算なしに動くタイプではない。

 

だけど…。

 

ジェジュンは沸き上がる心配をグッと噛みしめるようにドアノブに手をかけた。

 

そっとカギを開け、足音を立てないようにリビングに入ると、ユノが資料を持ったままソファで転寝をしていた。

髪が乱れ、いつもより子供っぽく見えるユノに、ジェジュンはクスリと微笑んだ。

もう少し…ユノの寝顔を見ていたい…。

 

そっと近づき、しばらく寝顔を見つめた後、傍にあったブランケットをそっとかけてやる。

その瞬間、腕を強く掴まれた。

 

「わっ!ユノ、起きてたの…?」

「今起きた。遅かったな」

「ごめん、撮影が押して…」

「疲れたか?」

 

ユノはそう言って腕の力だけでジェジュンの体を引きずり上げ、自分の体の上に乗せた。

 

「ユノの方こそ、疲れてるんじゃない?」

 

ユノの乱れた前髪を撫でると、ユノはフッと笑った。

気を許したものだけに見せる、優しくて可愛い笑顔、ジェジュンが一番好きな笑顔だ。

 

ユノの分厚い胸に顔をうずめ、そこから聞こえる力強い心音を聞き、目を閉じる。

優しく頭を撫でられて、ユノの匂いに包まれる。

 

「ユノは…ヤクザをやめるの…?」

「あぁ。お前と生きたいからな」

「俺は嬉しいけど…難しくないの?」

 

ユノはフフッと笑うと、ジェジュンの髪をかき上げた。

 

「お前は難しくなかったのか?お前は韓国だけじゃなく、世界中にファンがいるスターになった。それは簡単なことじゃない。お前が今までどれだけ頑張って来たか、どれだけ苦労したか…素人の俺さえ分かる。俺がヤクザを抜けるぐらい、どうってことないさ」

 

「心配なんだ…。ユノに何かあったら…俺、生きていけない」

 

「そのために準備している、チャンミンも手伝ってくれてる。心配するな」

 

チュッと軽い口づけを交わし、目が合うと深く口づける。

それはどんどん激しくなり、いつの間にか、ジェジュンはユノに組み敷かれていた。

 

「ゆ…の、待って、シャワー…」

「そんなもん浴びたら、お前の匂いが消えちまうだろ。だが今日はちゃんとベッドで抱いてやる」

 

ユノはひょいッとジェジュンを抱き上げ、そのままベッドルームに向かった。

ドサッとベッドに落とされて、両手を押し付けるように押し倒され、また深い口づけを交わした。

 

「んっ…ん…」

 

会えなかった日々をうめるように、二人は会えば必ず体を重ねた。

最初は痛みが勝っていた交わりも、回を重ねるごとに快感を得るようになり、二人は時間を忘れて互いを貪り合った。

 

ユノがいつものように自分の上で息を乱し、快感に顔を歪めているのを、ジェジュンは下から見ていた。

ふと、一瞬ユノの瞳が揺らいだ気がした。

 

ユノ…迷ってるの…?

 

ジェジュンは下からユノの頬に手を這わせると、そのままユノの首を自分に引き寄せた。

ユノの耳元で、荒い息のジェジュンが言った。

 

 

「…っはぁ…ユノ…迷うな。お前が自分を信じなきゃ…誰が信じるっていうんだ…」

 

 

ユノは大きく目を見開いた。

 

…参ったな、お前にはお見通しって事か。

 

 

「俺はユノを信じてる…だから、俺が信じてるユノを、お前も信じろ…」

 

 

ユノはジェジュンの両肩を抑えると、より深く侵入してきた。

 

「ああっ!深い…っ!」

 

ユノは何かを振り切る様に勢いを増し、深く強くジェジュンを貫いた。

 

 

「うっ!ぁぁっ…!いいよ…受け止めてやる。俺がっ…受け止めるから来いよっ…!」

 

「あぁっ!…ジェジュンっ‼」

 

 

ユノはジェジュンの最奥で果て、叩きつけるように自分の精を吐きだした。

 

 

 

 

 

 

ユノを信じてる…。

 

 

 

 

※※※

あめ限定にするほどじゃないかなと、オープンエチシーン。

ユノの迷いもすべてお見通しのアジアの宝石。

相変わらずお美しいです。

急遽書くことにしたサンキュー。

下調べしながらの執筆にずっと睡眠不足。トホホ

明日はJパですね。私も休みます。

事件が起きる問題の9話にむけて、明日は休んで頑張ります。