俺が生きる意味1 放課後のストラグル
愛憎入り交じる、生き残りを懸けた物語。
誰かを選ぶということは、選ばなかった誰かを犠牲にするということだ――。ある日の放課後、高校生の斗和は、仲のよい2人のクラスメイトから同時に告白を受ける。だが、平穏な日常は唐突に崩壊する。突如として現れた“見えない壁”によって学校は外部と隔離され、生徒たちは“人喰いの化け物”が徘徊する学校に取り残されてしまう。大切な人達を誰一人死なせたくないと、斗和は必死に抗うが――。濃密なサスペンス演出が冴える衝撃のパニックバトル、ついに開演!! この衝撃は心臓を抉る!!
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日本斗和は二人の女友達、赤峰寧々音、青葉萌由里からそれぞれ放課後に別の場所への誘いを受ける。その真意を図りかねて戸惑う斗和は、二つ上の先輩である婦設樂操に相談を持ちかける。その意味を知った彼は、寧々音からの告白自体を避けるよう、後回しにする形を取ることに決める。
図書館を後にし、萌由里の元へ向かおうとしたその時、校庭に突如猫蜘蛛の化け物が姿を現す。幾人もの生徒達が目の前で無惨にも殺されていく。その光景は現実のものとは到底信じられなかったが、順応性の高い斗和はいち早く危険を察知し、猫蜘蛛からの逃亡を試みる。そして、萌由里の身を案じた斗和は彼女の元へ向かう。
『魔法少女育成計画』以来の衝撃。ただただ怖い。ひたすらに逃れられない死の恐怖を振り解こうと藻掻いているかのよう。どこまでいっても絶望しかないんじゃなかろうか、とすら思ってしまう。これがパニックホラーってやつなのか。
閉鎖空間に人を喰らう化け物と共に閉じ込められるなんて考えただけで恐ろしい。自分だったら速攻で死んでるな、と思いました。
緊張感のあるサバイバル展開、めっちゃ面白くてページを捲る手が止まらなかった。
間に挟まれる回想も長すぎずちょうどいい。あと学校の見取り図が載ってたのもポイント高い。
それが友人であるならともかく、既に助かる見込みの薄い人間に固執して命を落とすことほど愚かなことはない。無駄死にに価値なんてないもの。
いくら正義感溢れる斗和と言えど、状況が状況である。割り切らなければ自分が死ぬ。ならば、自ずと取るべき行動は限られてくる。自分や友人が生き残れる様に、最善の手を尽くす。それだけで精一杯だろう。
どんな状況でも冷静さを保とうとする斗和から心の強さをひしひしと感じた。彼を支えた師匠の言葉の存在も大きい。
人間の醜い部分とか非情な面とか本気の憎悪とか、黒い部分がふんだんに描かれていた印象。泣き、叫び、怨みながら死にゆく人間の与える衝撃たるや……
命懸けで助けに行くって相当だよね。未だ明かされていないだけに、操さんと卓二の関係が激しく気になる。ただの幼なじみ、なんてもんじゃないでしょうこれは。
寧々音が読んでいた作中小説「装甲悪鬼ヨシヒコ」
主人公だと思われていた人物が死ぬ、というくだりが紹介され、現状と重なる。「もしかして斗和が死んでしまうのではないか?」という寧々音の思案が不安感をさらに煽る。これがまた堪らなく良い。
なんとか職員室に辿り着いた11人。一同は斗和の提案から今ある情報を整理し、今後の方針、対策を考えることに。
最も危険な化け物である猫蜘蛛がいるため校外に出るのは論外。となると校内、現状確認されている化け物はペタペタとぬしゃぼっちの二体。ペタペタにはとても敵わないが、ぬしゃぼっちは動きが遅いから倒すことが出来るのではないか?との結論に辿り着く。とりあえず各々が武器を持つことにしつつ、籠城か遊撃か、多数決でこれからの行動を決定することに。
生き残った者達は図書室に篭り、バリケードを張ることで化け物の侵入を食い止めようとする。それが致命的なミスに繋がるとも知らずに。
策も虚しく、次々と減っていく生徒の数。あの中では優秀で聡明、且つ斗和の支持もしてくれた王蛾の死は本当に惜しいと心から思った。「お前が俺ならそうしたはずだ」この台詞はあまりにも重い。
斗和の唱えた遊撃案が採用されていたらこうはならなかったのかな……と考えてみたけど、どっちにしろ逃げきれなくて同じようなことになってた気がする。
読みながら源本が実は超強くて化け物を倒すんじゃね?とか萌由里が実は化け物なのでは?と深読みしちゃったけどそんなことはなかったぜ……
ていうか幸せな結末が全く想像出来ないんですがそれは。
そしてラスト、こんなとこで切るなよおおおおお!!!!と叫びそうになった。引き上手すぎるでしょ……! 早急に二巻を買って読みたい。
しらびさんがこういう作品のイラストやるイメージなかったからなんか意外。凄いぴったりで素晴らしかった。可愛い女の子は勿論、しらびさんの描く男キャラも好きだなあ。